日商簿記2級 最短合格講座

区分0 3級の土台(仕訳のしくみ)★★★

No.01 仕訳のしくみ(借方・貸方と5つのグループ)

仕訳(しわけ)は、簿記のあらゆる問題の土台です。第1問の仕訳20点はもちろん、第3問も工業簿記も、仕訳が切れることを前提に作られています。この回はしっかり読んで、手を動かしてください。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 5つのグループと、左右の決まり
  3. 第2章 例で手を動かす
  4. 第3章 転記と試算表
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 仕訳 :出来事を「左と右」に分けて書く記録

簿記は、会社のお金や物の動きを記録する方法です。 お金や物が動く出来事が起きるたびに、「何が増えて、何が減ったか」を左右に分けて書きます。この1回分の記録が仕訳です。

たとえば「商品を現金で仕入れた」とします。 商品を買った分の費用(仕入)が増えて、現金が減りました。これを、左に「仕入」、右に「現金」と書くのが仕訳です。

② 借方・貸方 :左と右の名前

左側を借方(かりかた)、右側を貸方(かしかた)と呼びます。 借りる・貸すという意味はありません。ただの左右の名前です。

意味を考え始めると混乱するので、借方=左、貸方=右とだけ覚えてください。 仕訳では、借方の合計と貸方の合計が必ず同じ金額になります。

③ 勘定科目 :記録する項目の名前

現金、売掛金、売上、給料のように、何が増減したかを表す名前を勘定科目(かんじょうかもく)と言います。 仕訳の左右には、この勘定科目と金額を書きます。

2級では科目の数が多く見えますが、後で見るように5つのグループに分けると整理できます。 個々の科目の意味は、No.02(このあと出ます)で扱います。今は、科目とは項目の名前だと分かれば十分です。

第1章 5つのグループと、左右の決まり

① 勘定科目は5つのグループに入る 必ず覚える

どの勘定科目も、次の5グループのどれかに入ります。

グループ 中身 科目の例
資産 会社が持っている、価値のある物 現金・預金・売掛金・商品・備品・建物
負債 将来、払わなければならない義務 買掛金・借入金・未払金
純資産 返さなくてよい元手と、貯めてきた利益 資本金・繰越利益剰余金
収益 稼いだ分 売上・受取利息
費用 使った分 仕入・給料・家賃・減価償却費

貸借対照表(決算日の財産の状態を示す表)には、資産・負債・純資産が並びます。 損益計算書(一定期間の稼ぎと使った分を示す表)には、収益と費用が並びます。 5グループは、この2つの表の項目をそのまま分けた物です。

② 増えたら、どちら側か 必ず覚える

仕訳の左右は、この表だけで決まります。

グループ 増えたとき 減ったとき
資産 借方(左) 貸方(右)
費用 借方(左) 貸方(右)
負債 貸方(右) 借方(左)
純資産 貸方(右) 借方(左)
収益 貸方(右) 借方(左)

資産と費用は左、負債・純資産・収益は右。この2つの塊で覚えてください。 貸借対照表は左に資産、右に負債と純資産を置きます。損益計算書の費用は左、収益は右に置きます。表の中で並ぶ位置が、増えたときに書く側です。

減った場合は、すべて逆の側に書きます。

③ 仕訳を切る手順 必ず覚える

仕訳は、次の順番で毎回同じようにやります。

  1. 出来事を、増えた物と減った物に分ける(2つ以上のことも多い)
  2. それぞれの勘定科目を決める
  3. 5グループのどれかを見て、増減から左右を決める
  4. 金額を書き、借方の合計と貸方の合計が同じかを確かめる

最初は遅くて構いません。 1問ずつ声に出して「資産が減ったから右」と言いながらやると、早く身につきます。

第2章 例で手を動かす

数字は、分かりやすくした架空の例です。

① 2つの科目だけの取引 必ず覚える

「商品300,000円を現金で仕入れた」を切ります。 商品を買った分の費用が増え(仕入)、資産の現金が減りました。

借方 金額 貸方 金額
仕入 300,000 現金 300,000

商品の売買は「仕入」「売上」という科目で記録する方法を使います(三分法。詳しくはNo.02とNo.04で扱います。今は「仕入は費用、売上は収益」と見てください)。 仕入は費用なので、増えたら借方です。

もう1つ。「商品500,000円を掛けで売り上げた」。 掛けとは、代金を後で受け取る約束のことです。後で受け取れる権利を売掛金(資産)と言います。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 500,000 売上 500,000

② 減る側から始まる取引 必ず覚える

「銀行からの借入金1,000,000円のうち、400,000円を現金で返済した」。 借入金は負債です。負債が減ったので借方。現金は資産が減ったので貸方です。

借方 金額 貸方 金額
借入金 400,000 現金 400,000

増えるときは右、減るときは左という負債の動きは、最初は逆に感じやすい所です。 表の「負債の減ったとき=借方」を見直してください。

③ 3つ以上の科目が出る取引 さらっと

「備品120,000円を買い、20,000円は現金で払い、残りは後日払うことにした」。

後日払う義務は、商品以外のときは未払金(負債)と言います。商品の後払いは買掛金です。

借方 金額 貸方 金額
備品 120,000 現金 20,000
未払金 100,000

科目が3つになっても、借方120,000=貸方20,000+100,000で合っています。

第3章 転記と試算表

① 勘定口座(T字勘定)に写す さらっと

仕訳を、科目ごとの口座に写すことを転記と言います。 口座は、左右に分けたT字の形で書くので、T字勘定とも呼ばれます。

第2章の3つの取引を、現金の口座に写してみます。期首(期の最初)の現金は1,000,000円とします。

借方(左) 現金 金額 貸方(右) 現金 金額
期首残高 1,000,000 仕入 300,000
借入金返済 400,000
備品 20,000

口座の左右に書いてある「仕入」「借入金返済」「備品」は、その取引の相手の科目です。口座の左右には、相手の科目を書く決まりになっています。たとえば現金が減った取引を、現金の口座の右に、相手の科目名で書いています。

借方1,000,000と貸方720,000の差が、現金の残高280,000円です。 工業簿記や第3問では、この「口座を見て残高や流れを読む」力を使います。

② 試算表 :借方と貸方の合計が一致する表 さらっと

全部の仕訳を口座に写したあと、科目ごとの残高を一覧にした表が試算表です。 借方の合計と貸方の合計は、必ず同じ金額になります。合わなければ、どこかで写し間違えています。

決算の流れの中での試算表の位置づけは、No.03で扱います。

○ よくある勘違い:「借方に書くのは増える物」ではありません。資産は増えると借方ですが、負債は増えると貸方です。5グループで決まります
○ 注文を受けた、契約を結んだ、というだけではお金や物が動いていないので、仕訳を切りません
○ 商品の後払いは買掛金、それ以外の後払いは未払金。ここは第1問でも問われます
○ 関係する単元:科目の一覧はNo.02、決算の流れはNo.03

資産と費用は増えたら左、負債・純資産・収益は増えたら右。減ったら逆。借方の合計と貸方の合計が同じなら、仕訳は合っています。

確認問題

問1 「事務用の備品80,000円を購入し、代金は月末に支払うことにした」。正しい仕訳はどれですか。

問2 「銀行からの借入金500,000円のうち、200,000円を普通預金から返済した」。正しい仕訳はどれですか。

問3 次のうち、増えたときに貸方(右)に書く科目の組み合わせはどれですか。

出典:日本商工会議所「簿記 2級 試験科目・出題区分表」(https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 )。仕訳の左右の決まりは、簿記の一般的な基本原則に基づく。数値は説明用の架空の例。