日商簿記2級 最短合格講座

区分2 第2問・第3問 決算書と連結(40点)★★★

No.11 決算整理と財務諸表の作成

期末の帳簿を実態に合わせる「決算整理」を、1つずつ仕訳にして、損益計算書と貸借対照表に写すまでの単元です。第3問(20点)の中心で、部分点も取りやすい所です。しっかりやる回です。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 決算整理事項を1行ずつ仕訳にする
  3. 第2章 仕訳を財務諸表に写す
  4. 第3章 部分点の取り方
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 決算整理 :期末に帳簿を実態に合わせる作業

1年間の取引を仕訳していくと、帳簿の数字は実態からずれていきます。 たとえば商品は売れて減っているのに、帳簿の上では減っていません。備品は1年分古くなっているのに、金額がそのままです。

そのずれを期末にまとめて直す作業が、決算整理です。 直し方は、すべて「仕訳」です。決算整理は、特別な計算ではなく、仕訳を何本か切るだけだと思ってください。

② 決算整理前残高試算表 :直す前の帳簿の数字

試算表(しさんひょう)は、各勘定の残高を1枚に並べた表です。 決算整理の前の物を、決算整理前残高試算表といいます。問題には、これと「決算整理事項」(直す内容の一覧)が出ます。

作業の流れは次の3段です。

段 やること
1 決算整理事項を、1つずつ仕訳にする
2 試算表の金額に、仕訳を足し引きして、決算整理後の金額を出す
3 損益計算書の項目は損益計算書へ、残りは貸借対照表へ写す

この流れは No.03 で見ました。この単元は、その手順を2級の中身で埋めていく回です。

③ 似た言葉の違い

何のことか
費用の繰延べ 払い済みだが、まだ使っていない分を、来期の分として取り分ける(前払費用)
費用の見越し まだ払っていないが、当期に使った分を、当期の費用に足す(未払費用)

「前払・未払・前受・未収」の4つは、この2つの考え方の組み合わせです。第1章③で表にします。

第1章 決算整理事項を1行ずつ仕訳にする

この章では、次の例題の数字を使います。決算日は3月31日、期間は4月1日から1年間です。数字は説明用の架空の例です。

決算整理前残高試算表 借方 貸方
現金預金 1,200,000
売掛金 500,000
繰越商品 100,000
備品 600,000
仕入 1,800,000
給料 500,000
支払保険料 240,000
仮払法人税等 40,000
買掛金 400,000
貸倒引当金 5,000
備品減価償却累計額 240,000
資本金 1,100,000
繰越利益剰余金 225,000
売上 3,000,000
受取利息 10,000
合計 4,980,000 4,980,000

決算整理事項は次の5つです。

  1. 期末商品の棚卸高は120,000円
  2. 売掛金の期末残高に2%の貸倒引当金を設定する(差額補充法)
  3. 備品は定額法、耐用年数5年、残存価額ゼロで減価償却する
  4. 支払保険料のうち120,000円は、来期の分である
  5. 給料の未払いが150,000円ある

① 売上原価を出す :商品に関わる整理 必ず覚える

商品の期末の整理は、仕入と繰越商品の2つの勘定を使って、2本の仕訳で済みます。

借方 金額 貸方 金額
期首の商品を仕入に戻す 仕入 100,000 繰越商品 100,000
期末の商品を仕入から外す 繰越商品 120,000 仕入 120,000

これで仕入勘定が、売上原価(売れた分の仕入代)の金額になります。 式にすると、売上原価=期首商品+当期仕入-期末商品。この例では 100,000+1,800,000-120,000=1,780,000円です。

期末の商品が、帳簿より実際は少なかった時は、減った分が「棚卸減耗損(たなおろしげんもうそん)」です。帳簿の数量が100個、実際が95個、1個1,000円なら、5個×1,000円=5,000円を(借)棚卸減耗損 (貸)繰越商品とします。 損益計算書のどこに入れるかは、問題文の指示に従います。ここは深追いしなくて大丈夫です。

② 貸倒引当金と減価償却 :計算してから仕訳にする 必ず覚える

まず貸倒引当金です。売掛金500,000円の2%は10,000円で、すでに5,000円ありますから、足りない5,000円だけを積みます。これが差額補充法です。

減価償却は、備品600,000円を5年で割って年120,000円です。

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金の設定 貸倒引当金繰入 5,000 貸倒引当金 5,000
減価償却 減価償却費 120,000 備品減価償却累計額 120,000

備品の金額を直接減らさず、累計額という別の勘定で貸方に置く書き方を、間接法といいます。2級はこの書き方が基本です。

○ 貸倒引当金は「必要額-今ある残高」。今の残高のほうが多い時は、戻し入れの仕訳になります((借)貸倒引当金 (貸)貸倒引当金戻入)
○ 償却の計算の基本は No.06 に戻ってください

③ 前払・未払・前受・未収 :期間のずれを直す 必ず覚える

当期の費用・収益は、お金を払った・もらった時期ではなく、使った・稼いだ期間で決まります。 そのずれを、4つの勘定で直します。

状況 仕訳の形 貸借対照表での置き場
来期の分を先に払っている (借)前払〇〇 (貸)その費用 資産
当期の分をまだ払っていない (借)その費用 (貸)未払〇〇 負債
来期の分を先にもらっている (借)その収益 (貸)前受〇〇 負債
当期の分をまだもらっていない (借)未収〇〇 (貸)その収益 資産

例題の事項4と5は次のとおりです。

借方 金額 貸方 金額
来期の保険料を取り分ける 前払保険料 120,000 支払保険料 120,000
当期の給料の未払い 給料 150,000 未払給料 150,000

迷ったら、費用か収益の勘定を先に動かし、反対側に前払・未払などを置きます。 費用が当期より多く載っていれば減らし、足りなければ足す。この向きで考えると、間違えにくくなります。

第2章 仕訳を財務諸表に写す

① 損益計算書に写す :項目ごとに並べる 必ず覚える

決算整理後の金額を、損益計算書の項目に並べます。例題では次のようになります。

項目 金額 出し方
売上高 3,000,000 売上
売上原価 1,780,000 100,000+1,800,000-120,000
売上総利益 1,220,000
販売費及び一般管理費 895,000 下の内訳
営業利益 325,000
営業外収益(受取利息) 10,000
経常利益 335,000

販売費及び一般管理費の内訳は、給料650,000(500,000+150,000)、保険料120,000(240,000-120,000)、貸倒引当金繰入5,000、減価償却費120,000で、合計895,000円です。

② 法人税等と当期純利益 :最後の一手 さらっと

経常利益335,000円に、税率30%をかけると法人税等は100,500円です。すでに中間で40,000円を払っている(仮払法人税等)ので、残りは未払いにします。

借方 金額 貸方 金額
法人税等の計上 法人税等 100,500 仮払法人税等 40,000
未払法人税等 60,500

当期純利益は 335,000-100,500=234,500円です。税の仕組みは No.09 で詳しく扱いました。

③ 貸借対照表に写す :控除の表し方に気をつける 必ず覚える

残りの勘定を貸借対照表に置きます。

資産 金額 負債・純資産 金額
現金預金 1,200,000 買掛金 400,000
売掛金 500,000 未払給料 150,000
貸倒引当金 △10,000 未払法人税等 60,500
商品 120,000 資本金 1,100,000
前払保険料 120,000 繰越利益剰余金 459,500
備品 600,000
減価償却累計額 △360,000
合計 2,170,000 合計 2,170,000

繰越利益剰余金は、試算表の225,000円に当期純利益234,500円を足した、459,500円です。 貸倒引当金と減価償却累計額は、資産から引く項目なので、マイナスで表します(△は引く印)。繰越商品は、貸借対照表では「商品」という名前に変わります。

左右が2,170,000円で一致すれば、ほぼ間違いありません。

第3章 部分点の取り方

① 先に仕訳を全部書く 必ず覚える

この問題は、表を見て直接数字を書こうとすると、手が止まりやすくなります。 事項を上から1つずつ、仕訳にして余白に書いてください。仕訳さえ書ければ、あとは写すだけです。

部分点は、行ごとに付くものと考えて構いません。1つの事項が分からなくても、ほかの行は取れます。

② 検算の使いどころ さらっと

貸借対照表の左右の合計が一致するかは、最後の検算になります。 ずれた時は、どの事項で貸借の片方だけに書いたか、仕訳を見直します。1か所の書き忘れが多いです。

③ 時間の使い方 さらっと

ネット試験は90分で、1問に使える時間の目安は、20分前後です。 分からない事項で止まらず、飛ばして先に進み、最後に戻ります。飛ばした行だけが空欄でも、全体の点は残ります。

決算整理は、事項を上から1つずつ「仕訳」にする。売上原価は仕入と繰越商品の2本、引当金は「必要額-残高」、前払・未払は費用の向きで考える。仕訳を書けば、あとは財務諸表に写すだけ。

確認問題

問1 期首商品棚卸高は50,000円、期末商品棚卸高は70,000円です(三分法、仕入勘定で売上原価を計算します)。正しい仕訳はどれですか。

問2 売掛金の期末残高は800,000円で、2%の貸倒引当金を差額補充法で設定します。貸倒引当金の決算整理前の残高は6,000円です。正しい仕訳はどれですか。

問3 決算日は3月31日です。当期の12月1日に、向こう1年分の保険料180,000円を支払い、全額を費用に計上しています。決算整理の仕訳として正しいのはどれですか。

問4 取得原価900,000円の備品(定額法、耐用年数6年、残存価額ゼロ、間接法)を、当期末で3年分償却済みです(当期の決算整理後)。貸借対照表で、この備品はどう表されますか。

出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級(試験科目・出題区分表、https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 )。数字は説明用の架空の例。