1年間の取引を仕訳していくと、帳簿の数字は実態からずれていきます。 たとえば商品は売れて減っているのに、帳簿の上では減っていません。備品は1年分古くなっているのに、金額がそのままです。
そのずれを期末にまとめて直す作業が、決算整理です。 直し方は、すべて「仕訳」です。決算整理は、特別な計算ではなく、仕訳を何本か切るだけだと思ってください。
試算表(しさんひょう)は、各勘定の残高を1枚に並べた表です。 決算整理の前の物を、決算整理前残高試算表といいます。問題には、これと「決算整理事項」(直す内容の一覧)が出ます。
作業の流れは次の3段です。
| 段 | やること |
|---|---|
| 1 | 決算整理事項を、1つずつ仕訳にする |
| 2 | 試算表の金額に、仕訳を足し引きして、決算整理後の金額を出す |
| 3 | 損益計算書の項目は損益計算書へ、残りは貸借対照表へ写す |
この流れは No.03 で見ました。この単元は、その手順を2級の中身で埋めていく回です。
| 何のことか | |
|---|---|
| 費用の繰延べ | 払い済みだが、まだ使っていない分を、来期の分として取り分ける(前払費用) |
| 費用の見越し | まだ払っていないが、当期に使った分を、当期の費用に足す(未払費用) |
「前払・未払・前受・未収」の4つは、この2つの考え方の組み合わせです。第1章③で表にします。
この章では、次の例題の数字を使います。決算日は3月31日、期間は4月1日から1年間です。数字は説明用の架空の例です。
| 決算整理前残高試算表 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 現金預金 | 1,200,000 | |
| 売掛金 | 500,000 | |
| 繰越商品 | 100,000 | |
| 備品 | 600,000 | |
| 仕入 | 1,800,000 | |
| 給料 | 500,000 | |
| 支払保険料 | 240,000 | |
| 仮払法人税等 | 40,000 | |
| 買掛金 | 400,000 | |
| 貸倒引当金 | 5,000 | |
| 備品減価償却累計額 | 240,000 | |
| 資本金 | 1,100,000 | |
| 繰越利益剰余金 | 225,000 | |
| 売上 | 3,000,000 | |
| 受取利息 | 10,000 | |
| 合計 | 4,980,000 | 4,980,000 |
決算整理事項は次の5つです。
商品の期末の整理は、仕入と繰越商品の2つの勘定を使って、2本の仕訳で済みます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 期首の商品を仕入に戻す | 仕入 | 100,000 | 繰越商品 | 100,000 |
| 期末の商品を仕入から外す | 繰越商品 | 120,000 | 仕入 | 120,000 |
これで仕入勘定が、売上原価(売れた分の仕入代)の金額になります。 式にすると、売上原価=期首商品+当期仕入-期末商品。この例では 100,000+1,800,000-120,000=1,780,000円です。
期末の商品が、帳簿より実際は少なかった時は、減った分が「棚卸減耗損(たなおろしげんもうそん)」です。帳簿の数量が100個、実際が95個、1個1,000円なら、5個×1,000円=5,000円を(借)棚卸減耗損 (貸)繰越商品とします。 損益計算書のどこに入れるかは、問題文の指示に従います。ここは深追いしなくて大丈夫です。
まず貸倒引当金です。売掛金500,000円の2%は10,000円で、すでに5,000円ありますから、足りない5,000円だけを積みます。これが差額補充法です。
減価償却は、備品600,000円を5年で割って年120,000円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 貸倒引当金の設定 | 貸倒引当金繰入 | 5,000 | 貸倒引当金 | 5,000 |
| 減価償却 | 減価償却費 | 120,000 | 備品減価償却累計額 | 120,000 |
備品の金額を直接減らさず、累計額という別の勘定で貸方に置く書き方を、間接法といいます。2級はこの書き方が基本です。
○ 貸倒引当金は「必要額-今ある残高」。今の残高のほうが多い時は、戻し入れの仕訳になります((借)貸倒引当金 (貸)貸倒引当金戻入)
○ 償却の計算の基本は No.06 に戻ってください
当期の費用・収益は、お金を払った・もらった時期ではなく、使った・稼いだ期間で決まります。 そのずれを、4つの勘定で直します。
| 状況 | 仕訳の形 | 貸借対照表での置き場 |
|---|---|---|
| 来期の分を先に払っている | (借)前払〇〇 (貸)その費用 | 資産 |
| 当期の分をまだ払っていない | (借)その費用 (貸)未払〇〇 | 負債 |
| 来期の分を先にもらっている | (借)その収益 (貸)前受〇〇 | 負債 |
| 当期の分をまだもらっていない | (借)未収〇〇 (貸)その収益 | 資産 |
例題の事項4と5は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 来期の保険料を取り分ける | 前払保険料 | 120,000 | 支払保険料 | 120,000 |
| 当期の給料の未払い | 給料 | 150,000 | 未払給料 | 150,000 |
迷ったら、費用か収益の勘定を先に動かし、反対側に前払・未払などを置きます。 費用が当期より多く載っていれば減らし、足りなければ足す。この向きで考えると、間違えにくくなります。
決算整理後の金額を、損益計算書の項目に並べます。例題では次のようになります。
| 項目 | 金額 | 出し方 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,000,000 | 売上 |
| 売上原価 | 1,780,000 | 100,000+1,800,000-120,000 |
| 売上総利益 | 1,220,000 | |
| 販売費及び一般管理費 | 895,000 | 下の内訳 |
| 営業利益 | 325,000 | |
| 営業外収益(受取利息) | 10,000 | |
| 経常利益 | 335,000 |
販売費及び一般管理費の内訳は、給料650,000(500,000+150,000)、保険料120,000(240,000-120,000)、貸倒引当金繰入5,000、減価償却費120,000で、合計895,000円です。
経常利益335,000円に、税率30%をかけると法人税等は100,500円です。すでに中間で40,000円を払っている(仮払法人税等)ので、残りは未払いにします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 法人税等の計上 | 法人税等 | 100,500 | 仮払法人税等 | 40,000 |
| 未払法人税等 | 60,500 |
当期純利益は 335,000-100,500=234,500円です。税の仕組みは No.09 で詳しく扱いました。
残りの勘定を貸借対照表に置きます。
| 資産 | 金額 | 負債・純資産 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 1,200,000 | 買掛金 | 400,000 |
| 売掛金 | 500,000 | 未払給料 | 150,000 |
| 貸倒引当金 | △10,000 | 未払法人税等 | 60,500 |
| 商品 | 120,000 | 資本金 | 1,100,000 |
| 前払保険料 | 120,000 | 繰越利益剰余金 | 459,500 |
| 備品 | 600,000 | ||
| 減価償却累計額 | △360,000 | ||
| 合計 | 2,170,000 | 合計 | 2,170,000 |
繰越利益剰余金は、試算表の225,000円に当期純利益234,500円を足した、459,500円です。 貸倒引当金と減価償却累計額は、資産から引く項目なので、マイナスで表します(△は引く印)。繰越商品は、貸借対照表では「商品」という名前に変わります。
左右が2,170,000円で一致すれば、ほぼ間違いありません。
この問題は、表を見て直接数字を書こうとすると、手が止まりやすくなります。 事項を上から1つずつ、仕訳にして余白に書いてください。仕訳さえ書ければ、あとは写すだけです。
部分点は、行ごとに付くものと考えて構いません。1つの事項が分からなくても、ほかの行は取れます。
貸借対照表の左右の合計が一致するかは、最後の検算になります。 ずれた時は、どの事項で貸借の片方だけに書いたか、仕訳を見直します。1か所の書き忘れが多いです。
ネット試験は90分で、1問に使える時間の目安は、20分前後です。 分からない事項で止まらず、飛ばして先に進み、最後に戻ります。飛ばした行だけが空欄でも、全体の点は残ります。
決算整理は、事項を上から1つずつ「仕訳」にする。売上原価は仕入と繰越商品の2本、引当金は「必要額-残高」、前払・未払は費用の向きで考える。仕訳を書けば、あとは財務諸表に写すだけ。
問1 期首商品棚卸高は50,000円、期末商品棚卸高は70,000円です(三分法、仕入勘定で売上原価を計算します)。正しい仕訳はどれですか。
問2 売掛金の期末残高は800,000円で、2%の貸倒引当金を差額補充法で設定します。貸倒引当金の決算整理前の残高は6,000円です。正しい仕訳はどれですか。
問3 決算日は3月31日です。当期の12月1日に、向こう1年分の保険料180,000円を支払い、全額を費用に計上しています。決算整理の仕訳として正しいのはどれですか。
問4 取得原価900,000円の備品(定額法、耐用年数6年、残存価額ゼロ、間接法)を、当期末で3年分償却済みです(当期の決算整理後)。貸借対照表で、この備品はどう表されますか。
出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級(試験科目・出題区分表、https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 )。数字は説明用の架空の例。