日商簿記2級 最短合格講座

区分2 第2問・第3問 決算書と連結(40点)★★★

No.13 連結会計①(支配獲得と資本連結)

親会社と子会社を1つの会社のように合算する「連結」の、入り口の単元です。株式を買って支配した日の処理と、その後の毎年の処理、次の年に引き継ぐ開始仕訳までをやります。第2問(20点)の中心なので、しっかりやる回です。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 支配獲得日の資本連結
  3. 第2章 支配獲得後の毎年の修正
  4. 第3章 次の年に進む :開始仕訳
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 親会社・子会社・連結 :グループを1つの会社として見る

ほかの会社の議決権(株主総会で投票できる権利)の過半数、つまり50%を超える株を持って、その会社を支配している会社が親会社です。支配されている側が子会社です。 この単元では、親会社をP社、子会社をS社と呼びます。

連結財務諸表は、P社とS社の決算書を1つに合算した決算書です。 グループ全体で、いくら稼ぎ、いくら持っているのかを見るための物です。

② 連結修正仕訳 :帳簿には書かず、連結の表の上だけで行う

合算するとき、そのまま足すと数字が重なります。重なる分を消したり、組み替えたりするための仕訳が、連結修正仕訳です。

この仕訳は、P社やS社の帳簿には書きません。連結精算表(P社とS社の金額を並べ、修正を加えて、連結の金額を出す表)の上だけで行います。 だから、毎年の決算で、同じ修正を入れ直す必要が出ます。これが第3章の開始仕訳につながります。

③ 株式と資本金 :同じ物の表と裏

P社は、S社の株式を買ったお金を、自分の貸借対照表に「S社株式」(資産)として置いています。 一方、S社の貸借対照表には、株主が出したお金が「資本金」などの純資産として載っています。

この2つは、同じお金を、買った側と出された側から見た物です。グループ全体で見ると、自分の会社の中でお金が回っただけなので、足してはいけません。 その重なりを消す作業が、次の資本連結です。

第1章 支配獲得日の資本連結

この章では、次の例で進めます。数字は説明用の架空の例です。

P社は、X1年3月31日に、S社の発行済株式の80%を700,000円で買いました。この日が支配獲得日(支配を手に入れた日)です。 同じ日のS社の純資産は、資本金500,000円と利益剰余金300,000円で、合計800,000円です。

① 子会社の純資産を、親の分と非支配の分に分ける 必ず覚える

S社の純資産800,000円は、株主みんなの物です。 P社の持分は80%で、残りの20%は、P社以外の株主(非支配株主)が持っています。

割合 金額
P社の持分 80% 800,000×0.8=640,000
非支配株主の持分 20% 800,000×0.2=160,000

連結の貸借対照表では、非支配株主の分は「非支配株主持分」という純資産の項目で表します。

② のれん :持分より高く買った差額 必ず覚える

P社が払ったのは700,000円で、持分は640,000円です。 この差額の60,000円は、S社の将来の稼ぐ力などに上乗せして払った分で、のれんという資産として計上します。

のれんが借方に出る理由は、こうです。払った700,000円の分は、S社株式を消すので貸方になります。受け取った持分(640,000円)より多く払った差額は「目に見えない価値という資産」を買ったことになるので、資産の側、つまり借方に置きます。

のれん=P社が払った金額(取得原価)-P社の持分。この式が基本です。

○ 逆に、持分より安く買ったときは、差額は「負ののれん発生益」になり、貸方に書きます。出たらその場で左右を逆にして書く、程度で足ります
○ S社の資産を時価に直す処理は、この講座では扱いません。まず型を覚えてください

③ 資本連結の仕訳 :子会社の資本と親の株式を消す 必ず覚える

S社の資本金と利益剰余金を消し、P社のS社株式を消し、差額としてのれんと非支配株主持分を置きます。

借方 金額 貸方 金額
支配獲得日の連結修正仕訳 資本金 500,000 S社株式 700,000
利益剰余金 300,000 非支配株主持分 160,000
のれん 60,000
合計 860,000 860,000

借方に「消す物(S社の純資産)とのれん」、貸方に「消す物(S社株式)と非支配株主持分」が並ぶ、と覚えてください。 左右の合計が860,000円で一致していることも、いつも確かめます。

第2章 支配獲得後の毎年の修正

支配獲得日の翌年(X1年4月からX2年3月まで)の1年間を考えます。 この年のS社は、当期純利益が100,000円、配当が40,000円でした。

① のれんの償却 :のれんを毎年少しずつ費用にする 必ず覚える

のれんは、一定の年数で少しずつ費用にします。この例では10年の定額法で、60,000÷10=6,000円が1年分です。

借方 金額 貸方 金額
のれんの償却 のれん償却 6,000 のれん 6,000

償却の年数は、問題文に書いてあります。のれん償却は、損益計算書では販売費及び一般管理費に入ります。

② 子会社の当期純利益の振替 :非支配株主の取り分を分ける 必ず覚える

S社が稼いだ利益100,000円の20%は、非支配株主の取り分です。連結の利益から、その分を分けて表します。

借方 金額 貸方 金額
非支配株主への振替 非支配株主に帰属する当期純利益 20,000 非支配株主持分 20,000

借方の「非支配株主に帰属する当期純利益」は、連結の損益計算書の最後の方に出てくる項目です。連結で合算した利益のうち、非支配株主の取り分を差し引いて、親会社の株主の取り分を出すために使います。貸方では、非支配株主持分が増えます。 利益の分だけ、非支配株主持分も増える、と捉えてください。

③ 配当の修正 :グループの中のお金の動きを消す 必ず覚える

S社が配当40,000円を払いました。P社は80%を受け取り、非支配株主が20%を受け取っています。

P社の受取配当金32,000円(40,000×0.8)は、グループの中でお金が移っただけなので、消します。非支配株主の分8,000円(40,000×0.2)は、非支配株主持分の減少として表します。

借方 金額 貸方 金額
配当の修正 受取配当金 32,000 剰余金の配当 40,000
非支配株主持分 8,000
合計 40,000 40,000

貸方の「剰余金の配当」は、S社が配当として出した40,000円全体を取り消す意味です。

○ 受取配当金は、親の分だけ消します。非支配株主の分は、親の収益ではありません
○ 配当の仕訳そのもの(剰余金の配当)の元の形は No.07 に戻ってください

第3章 次の年に進む :開始仕訳

① なぜ開始仕訳が要るのか 必ず覚える

連結修正仕訳は、帳簿に書かないので、翌年の連結をするときに、前の年の修正が消えています。 そこで、翌年の連結精算表の最初に、「前の年までの修正を、まとめて入れ直す」仕訳を入れます。これが開始仕訳です。

前の年の損益計算書の項目(のれん償却・非支配株主に帰属する当期純利益など)は、前の年のうちに利益剰余金へ振り替えられています。 そこで開始仕訳では、これらを「利益剰余金当期首残高」という科目にまとめます。

たとえば第2章の非支配株主への振替20,000円と配当の修正8,000円は、開始仕訳では差し引きの12,000円((100,000-40,000)×20%=20,000-8,000)という1つの金額になって出てきます。

② 開始仕訳の作り方 :前の年までの修正を足し合わせる 必ず覚える

X2年4月からの年(X3年3月期)の開始仕訳は、次の3つを足し合わせて作ります。

前の年までの修正 開始仕訳での形
資本連結 資本金当期首残高 500,000、利益剰余金当期首残高 300,000、のれん 60,000/S社株式 700,000、非支配株主持分当期首残高 160,000
のれん償却(6,000円) 利益剰余金当期首残高 6,000/のれん 6,000
非支配株主の取り分((100,000-40,000)×20%) 利益剰余金当期首残高 12,000/非支配株主持分当期首残高 12,000

3行をまとめると、次の1本の仕訳になります。

借方 金額 貸方 金額
開始仕訳 資本金当期首残高 500,000 S社株式 700,000
利益剰余金当期首残高 318,000 非支配株主持分当期首残高 172,000
のれん 54,000
合計 872,000 872,000

利益剰余金は 300,000+6,000+12,000=318,000円。のれんは 60,000-6,000=54,000円(償却が済んだ後の残り)です。 非支配株主持分は、S社の純資産(800,000+100,000-40,000=860,000円)の20%、つまり172,000円と一致します。この一致で検算できます。

③ 当期の仕訳との順番 さらっと

翌年の連結精算表では、次の順番で書きます。

  1. 開始仕訳(前の年までの修正を入れ直す)
  2. 当期の仕訳(のれん償却、当期純利益の振替、配当の修正)

当期の仕訳の中身は、第2章と同じで、金額だけ当期の数字になります。 連結の問題で迷ったときは「開始仕訳→当期の仕訳」の順だけ思い出してください。

○ 2年目以降で資本金や利益剰余金を消すときは「当期首残高」という名前を使います。支配獲得日の年だけは「資本金」「利益剰余金」です
○ 内部取引や未実現利益の修正は、No.14(後で出ます)で扱います。ここでは、グループの会社どうしの取引は、そのままでは数字が重なるので別に消す、とだけ押さえてください

資本連結は「S社の純資産とS社株式を消し、差額をのれんと非支配株主持分に置く」。のれん=払った金額-親の持分。毎年、のれんの償却・子会社の利益の振替・配当の修正をする。2年目からは、先に開始仕訳を入れる。

確認問題

問1 P社は、S社の発行済株式の60%を350,000円で取得し、支配しました。この日のS社の純資産は、資本金400,000円と利益剰余金100,000円です。支配獲得日の連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。

問2 のれん50,000円を5年で、定額法により毎年償却します。1年分の連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。

問3 子会社S社(P社の持分60%)が、配当50,000円を支払いました。連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。

問4 支配獲得の翌年の連結で、S社の資本金500,000円を消す開始仕訳の借方の科目として、正しいのはどれですか。

出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級(試験科目・出題区分表、https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 )。数字は説明用の架空の例。