ほかの会社の議決権(株主総会で投票できる権利)の過半数、つまり50%を超える株を持って、その会社を支配している会社が親会社です。支配されている側が子会社です。 この単元では、親会社をP社、子会社をS社と呼びます。
連結財務諸表は、P社とS社の決算書を1つに合算した決算書です。 グループ全体で、いくら稼ぎ、いくら持っているのかを見るための物です。
合算するとき、そのまま足すと数字が重なります。重なる分を消したり、組み替えたりするための仕訳が、連結修正仕訳です。
この仕訳は、P社やS社の帳簿には書きません。連結精算表(P社とS社の金額を並べ、修正を加えて、連結の金額を出す表)の上だけで行います。 だから、毎年の決算で、同じ修正を入れ直す必要が出ます。これが第3章の開始仕訳につながります。
P社は、S社の株式を買ったお金を、自分の貸借対照表に「S社株式」(資産)として置いています。 一方、S社の貸借対照表には、株主が出したお金が「資本金」などの純資産として載っています。
この2つは、同じお金を、買った側と出された側から見た物です。グループ全体で見ると、自分の会社の中でお金が回っただけなので、足してはいけません。 その重なりを消す作業が、次の資本連結です。
この章では、次の例で進めます。数字は説明用の架空の例です。
P社は、X1年3月31日に、S社の発行済株式の80%を700,000円で買いました。この日が支配獲得日(支配を手に入れた日)です。 同じ日のS社の純資産は、資本金500,000円と利益剰余金300,000円で、合計800,000円です。
S社の純資産800,000円は、株主みんなの物です。 P社の持分は80%で、残りの20%は、P社以外の株主(非支配株主)が持っています。
| 割合 | 金額 | |
|---|---|---|
| P社の持分 | 80% | 800,000×0.8=640,000 |
| 非支配株主の持分 | 20% | 800,000×0.2=160,000 |
連結の貸借対照表では、非支配株主の分は「非支配株主持分」という純資産の項目で表します。
P社が払ったのは700,000円で、持分は640,000円です。 この差額の60,000円は、S社の将来の稼ぐ力などに上乗せして払った分で、のれんという資産として計上します。
のれんが借方に出る理由は、こうです。払った700,000円の分は、S社株式を消すので貸方になります。受け取った持分(640,000円)より多く払った差額は「目に見えない価値という資産」を買ったことになるので、資産の側、つまり借方に置きます。
のれん=P社が払った金額(取得原価)-P社の持分。この式が基本です。
○ 逆に、持分より安く買ったときは、差額は「負ののれん発生益」になり、貸方に書きます。出たらその場で左右を逆にして書く、程度で足ります
○ S社の資産を時価に直す処理は、この講座では扱いません。まず型を覚えてください
S社の資本金と利益剰余金を消し、P社のS社株式を消し、差額としてのれんと非支配株主持分を置きます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 支配獲得日の連結修正仕訳 | 資本金 | 500,000 | S社株式 | 700,000 |
| 利益剰余金 | 300,000 | 非支配株主持分 | 160,000 | |
| のれん | 60,000 | |||
| 合計 | 860,000 | 860,000 |
借方に「消す物(S社の純資産)とのれん」、貸方に「消す物(S社株式)と非支配株主持分」が並ぶ、と覚えてください。 左右の合計が860,000円で一致していることも、いつも確かめます。
支配獲得日の翌年(X1年4月からX2年3月まで)の1年間を考えます。 この年のS社は、当期純利益が100,000円、配当が40,000円でした。
のれんは、一定の年数で少しずつ費用にします。この例では10年の定額法で、60,000÷10=6,000円が1年分です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| のれんの償却 | のれん償却 | 6,000 | のれん | 6,000 |
償却の年数は、問題文に書いてあります。のれん償却は、損益計算書では販売費及び一般管理費に入ります。
S社が稼いだ利益100,000円の20%は、非支配株主の取り分です。連結の利益から、その分を分けて表します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 非支配株主への振替 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 20,000 | 非支配株主持分 | 20,000 |
借方の「非支配株主に帰属する当期純利益」は、連結の損益計算書の最後の方に出てくる項目です。連結で合算した利益のうち、非支配株主の取り分を差し引いて、親会社の株主の取り分を出すために使います。貸方では、非支配株主持分が増えます。 利益の分だけ、非支配株主持分も増える、と捉えてください。
S社が配当40,000円を払いました。P社は80%を受け取り、非支配株主が20%を受け取っています。
P社の受取配当金32,000円(40,000×0.8)は、グループの中でお金が移っただけなので、消します。非支配株主の分8,000円(40,000×0.2)は、非支配株主持分の減少として表します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 配当の修正 | 受取配当金 | 32,000 | 剰余金の配当 | 40,000 |
| 非支配株主持分 | 8,000 | |||
| 合計 | 40,000 | 40,000 |
貸方の「剰余金の配当」は、S社が配当として出した40,000円全体を取り消す意味です。
○ 受取配当金は、親の分だけ消します。非支配株主の分は、親の収益ではありません
○ 配当の仕訳そのもの(剰余金の配当)の元の形は No.07 に戻ってください
連結修正仕訳は、帳簿に書かないので、翌年の連結をするときに、前の年の修正が消えています。 そこで、翌年の連結精算表の最初に、「前の年までの修正を、まとめて入れ直す」仕訳を入れます。これが開始仕訳です。
前の年の損益計算書の項目(のれん償却・非支配株主に帰属する当期純利益など)は、前の年のうちに利益剰余金へ振り替えられています。 そこで開始仕訳では、これらを「利益剰余金当期首残高」という科目にまとめます。
たとえば第2章の非支配株主への振替20,000円と配当の修正8,000円は、開始仕訳では差し引きの12,000円((100,000-40,000)×20%=20,000-8,000)という1つの金額になって出てきます。
X2年4月からの年(X3年3月期)の開始仕訳は、次の3つを足し合わせて作ります。
| 前の年までの修正 | 開始仕訳での形 |
|---|---|
| 資本連結 | 資本金当期首残高 500,000、利益剰余金当期首残高 300,000、のれん 60,000/S社株式 700,000、非支配株主持分当期首残高 160,000 |
| のれん償却(6,000円) | 利益剰余金当期首残高 6,000/のれん 6,000 |
| 非支配株主の取り分((100,000-40,000)×20%) | 利益剰余金当期首残高 12,000/非支配株主持分当期首残高 12,000 |
3行をまとめると、次の1本の仕訳になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 開始仕訳 | 資本金当期首残高 | 500,000 | S社株式 | 700,000 |
| 利益剰余金当期首残高 | 318,000 | 非支配株主持分当期首残高 | 172,000 | |
| のれん | 54,000 | |||
| 合計 | 872,000 | 872,000 |
利益剰余金は 300,000+6,000+12,000=318,000円。のれんは 60,000-6,000=54,000円(償却が済んだ後の残り)です。 非支配株主持分は、S社の純資産(800,000+100,000-40,000=860,000円)の20%、つまり172,000円と一致します。この一致で検算できます。
翌年の連結精算表では、次の順番で書きます。
当期の仕訳の中身は、第2章と同じで、金額だけ当期の数字になります。 連結の問題で迷ったときは「開始仕訳→当期の仕訳」の順だけ思い出してください。
○ 2年目以降で資本金や利益剰余金を消すときは「当期首残高」という名前を使います。支配獲得日の年だけは「資本金」「利益剰余金」です
○ 内部取引や未実現利益の修正は、No.14(後で出ます)で扱います。ここでは、グループの会社どうしの取引は、そのままでは数字が重なるので別に消す、とだけ押さえてください
資本連結は「S社の純資産とS社株式を消し、差額をのれんと非支配株主持分に置く」。のれん=払った金額-親の持分。毎年、のれんの償却・子会社の利益の振替・配当の修正をする。2年目からは、先に開始仕訳を入れる。
問1 P社は、S社の発行済株式の60%を350,000円で取得し、支配しました。この日のS社の純資産は、資本金400,000円と利益剰余金100,000円です。支配獲得日の連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。
問2 のれん50,000円を5年で、定額法により毎年償却します。1年分の連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。
問3 子会社S社(P社の持分60%)が、配当50,000円を支払いました。連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。
問4 支配獲得の翌年の連結で、S社の資本金500,000円を消す開始仕訳の借方の科目として、正しいのはどれですか。
出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級(試験科目・出題区分表、https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 )。数字は説明用の架空の例。