日商簿記2級 最短合格講座

区分2 第2問・第3問 決算書と連結(40点)★★★

No.14 連結会計②(内部取引と未実現利益)

親会社と子会社のあいだの売り買いや貸し借りを、連結で消す方法の単元です。商品の売買、売掛金と買掛金、貸倒引当金、そして「まだ外に売れていない商品に含まれる利益」を消す手順までやります。第2問(20点)の山場なので、しっかりやる回です。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 内部取引と債権債務の相殺
  3. 第2章 未実現利益の消去
  4. 第3章 連結精算表の見方
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 内部取引 :グループの中だけで完結する取引

親会社P社と子会社S社のあいだの、商品の売買・お金の貸し借り・利息の支払いなどを、内部取引といいます。 P社の帳簿では売上、S社の帳簿では仕入になっていますが、グループ全体で見れば、自分たちの中で商品やお金が移っただけで、外の誰とも取引していません。

だから、連結の決算書では、内部取引を丸ごと消します。 連結の基本は No.13 で見ました。この単元は、その続きです。

② 未実現利益 :まだ稼いでいない利益

P社がS社に商品を売って、P社が利益を出したとします。 S社がその商品を外のお客さんに売り切っていれば、グループとして本当に稼いだことになります。ところが、S社がまだ持っていると、グループの中で動いただけで、利益は確定していません。

この、期末にまだグループの中に残っている商品に含まれる利益を、未実現利益といいます。連結では、この利益を消します。

③ 似た言葉の違い

売る側 買う側 非支配株主への影響
ダウンストリーム(下り) 親会社P社 子会社S社 利益は親が稼いだ物なので、非支配株主には回さない
アップストリーム(上り) 子会社S社 親会社P社 利益は子会社が稼いだ物なので、非支配株主にも負担させる

売る側が親か子かで、仕訳が1本変わります。問題文で「どちらからどちらに売ったか」を、まず探してください。

第1章 内部取引と債権債務の相殺

この章では、次の例で進めます。数字は説明用の架空の例です。 P社は、S社に商品を500,000円分売りました。P社には売掛金150,000円があり、S社にはその分の買掛金150,000円があります。

① 売上高と売上原価の相殺 必ず覚える

P社の売上500,000円と、S社の仕入500,000円(損益計算書では売上原価)を、両方消します。

借方 金額 貸方 金額
内部取引の相殺 売上高 500,000 売上原価 500,000

売上高が減り、売上原価も同じだけ減るので、売上総利益の金額は動きません。 動かさないのは、この取引で、グループの利益が出ているわけではないからです。

② 売掛金と買掛金の相殺 必ず覚える

P社の売掛金150,000円と、S社の買掛金150,000円も、グループの中の貸し借りなので、両方消します。

借方 金額 貸方 金額
債権債務の相殺 買掛金 150,000 売掛金 150,000

同じ形で消す物が、いくつかあります。

親の帳簿 子の帳簿
売掛金・受取手形・貸付金 買掛金・支払手形・借入金
受取利息・受取配当金 支払利息・剰余金の配当(No.13)
未収収益 未払費用

左の列の勘定をP社が持っているなら右の列をS社が持っている、と対で消します。

③ 貸倒引当金の修正 必ず覚える

消した売掛金150,000円に対して、P社が貸倒引当金を設定していた場合、その引当金は不要になります。 P社が2%(3,000円)設定していたなら、それも消します。

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金の修正 貸倒引当金 3,000 貸倒引当金繰入 3,000

連結では、グループの中の売掛金は「存在しない」ので、貸倒れも起きません。引当金とその費用を、セットで消します。

○ 子会社が設定した引当金を消すと、子会社の利益が増えるので、非支配株主の取り分も別に直します。例:修正が3,000円で非支配株主の持分が20%なら、600円。(借)非支配株主に帰属する当期純利益 600 (貸)非支配株主持分 600
○ 前の年に設定した引当金の扱いは、深追いしなくて大丈夫です

第2章 未実現利益の消去

① 親から子へ売った商品(ダウンストリーム) 必ず覚える

P社がS社に売った商品のうち、期末にS社に120,000円分(S社の仕入価格)が残っています。P社の売上総利益率は20%です。

未実現利益=120,000×20%=24,000円。 この利益を消し、商品の金額も、同じだけ減らします。

借方 金額 貸方 金額
未実現利益の消去 売上原価 24,000 商品 24,000

S社が持つ商品は、P社が利益を乗せた分だけ、高く見えています。その分を商品から引き、反対側の借方は売上原価を増やして、利益を減らします。

ダウンストリームは、親が稼いだ利益なので、これで終わりです。非支配株主には関係しません。

② 子から親へ売った商品(アップストリーム) 必ず覚える

売る側が子会社の時は、同じ金額の未実現利益24,000円を、まず同じ仕訳で消します。 加えて、その利益は子会社が稼いだものなので、非支配株主にも負担させます。非支配株主の持分が20%なら、24,000×20%=4,800円です。

借方 金額 貸方 金額
未実現利益の消去 売上原価 24,000 商品 24,000
非支配株主への配分 非支配株主持分 4,800 非支配株主に帰属する当期純利益 4,800

非支配株主に帰属する当期純利益は、No.13 で見たとおり、もともと子会社の利益の20%でした。 未実現利益の分だけ子会社の利益が減ったので、非支配株主の取り分も同じ割合で減らす、という仕訳です。

③ 翌年 :開始仕訳と実現の仕訳 さらっと

前の年の期末商品に含まれていた未実現利益は、翌年に商品が外に売れた時点で、本当の利益になります。 翌年の連結では、次の2つを入れます。

  1. 開始仕訳:前の年の消去を入れ直す
  2. 実現の仕訳:売れた分だけ、利益を戻す

ダウンストリームの場合を、まとめた形で見ます。

借方 金額 貸方 金額
開始仕訳+実現 利益剰余金当期首残高 24,000 売上原価 24,000

前の年に消した24,000円を利益剰余金の期首の側で引き受け、同じ金額を売上原価から引くことで、売れた分の利益を今年の利益に戻しています。 アップストリームの場合は、これに非支配株主の分(4,800円)の仕訳が加わります。細かい型は、問題文の指示に従う程度で足ります。

第3章 連結精算表の見方

① 表の形と読み方 必ず覚える

連結精算表は、P社とS社の金額を並べ、修正を足し引きして、連結の金額を出す表です。ここまでの例(売上500,000円、売掛金150,000円、未実現利益24,000円)をそのまま表にします。

科目 P社 S社 合計 修正 借方 修正 貸方 連結
売上高 1,500,000 900,000 2,400,000 500,000 1,900,000
売上原価 900,000 700,000 1,600,000 24,000 500,000 1,124,000
商品 200,000 300,000 500,000 24,000 476,000
売掛金 600,000 400,000 1,000,000 150,000 850,000
買掛金 300,000 500,000 800,000 150,000 650,000

表の読み方は、行ごとの次のルールです。費用と資産の行は「借方の修正を足し、貸方の修正を引く」。収益と負債と純資産の行は、その反対です。 売上高は収益なので、借方の500,000円を引いて1,900,000円。売上原価は費用なので、借方の24,000円を足し、貸方の500,000円を引いて1,124,000円になります。

連結の売上総利益は 1,900,000-1,124,000=776,000円で、合計の800,000円(2,400,000-1,600,000)から、未実現利益の24,000円だけ減っています。

② 修正を入れる順番 さらっと

修正仕訳は、次の順で入れると、抜けが出にくくなります。

  1. 開始仕訳(2年目以降)
  2. 当期の資本連結(のれん償却・非支配株主への振替・配当)
  3. 内部取引と債権債務の相殺
  4. 未実現利益の消去
  5. 貸倒引当金の修正

先の2つは No.13 の内容です。この単元の3〜5が、今日の中身です。

③ 部分点の取り方 さらっと

連結精算表は行数が多く、全部の行を完璧に出すのは大変です。 修正仕訳を1本ずつ書き出し、その仕訳に出てくる行から埋めていけば、分かった所は点になります。分からない修正は、飛ばして次へ進んで構いません。

内部取引は、売上高と売上原価、債権と債務を対で消す。期末に残る商品の未実現利益は、売上原価の増加と商品の減少で消す。親が売ったとき(ダウン)は非支配に回さず、子が売ったとき(アップ)は非支配にも配分する。

確認問題

問1 P社は、S社に商品300,000円を売り上げました(S社は仕入に計上)。連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。

問2 P社のS社に対する売掛金200,000円に、P社が1%(2,000円)の貸倒引当金を設定していました。売掛金と買掛金の相殺は済んでいます。引当金についての連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。

問3 P社(売上総利益率25%)が、S社(P社の持分70%)に売った商品のうち、期末にS社に80,000円(S社の仕入価格)が残っています。未実現利益の消去として、正しいのはどれですか。

問4 S社(P社の持分70%)が、P社に売った商品のうち、期末にP社に80,000円(P社の仕入価格)が残っています。S社の売上総利益率は25%です。未実現利益の消去として、正しいのはどれですか。

出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級(試験科目・出題区分表、https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 )。数字は説明用の架空の例。