日商簿記2級 最短合格講座

区分3 第4問・第5問 工業簿記(40点)★★★

No.20 直接原価計算とCVP分析

費用を変動費と固定費に分けて、売上がいくらあれば黒字になるかを考える単元です。第5問で出ます。公式は少なく、図の読み方より計算の順番が大事なので、しっかりやります。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 直接原価計算
  3. 第2章 CVP分析
  4. 確認問題

第0章 前提知識

① 変動費と固定費 :売上に連れて動くか、動かないか

費用は、売上や生産量にどう連れて動くかで2つに分けます。

No.16で見た製造間接費の「変動費と固定費」と同じ考え方です。

② 貢献利益 :売上から変動費を引いた利益

貢献利益=売上高-変動費

固定費を回収し、利益をつくることに貢献する金額、という意味です。 1個あたりに直したものが、1個あたりの貢献利益です。売上に対する割合は貢献利益率です。

例(架空):1個1,000円で売る商品。変動費は1個あたり、製造で400円、販売で100円、合計500円。固定費は、製造分が300,000円、販売・管理分が150,000円で、合計450,000円とします。

第1章 直接原価計算

① 損益計算書のつくり 必ず覚える

直接原価計算は、製造にかかった固定費も、その期の費用として全額引く計算方法です。製品の原価には、変動費しか入れません。

1,000個売った月の損益計算書は、次のようになります。

項目 金額
売上高(1,000個×1,000円) 1,000,000
変動売上原価(1,000個×400円) 400,000
変動販売費(1,000個×100円) 100,000
貢献利益 500,000
固定製造間接費 300,000
固定販売費及び一般管理費 150,000
営業利益 50,000

商業簿記で見た損益計算書は「売上総利益→営業利益」の順でした。 直接原価計算では、まず変動費を引いて貢献利益を出し、その後に固定費をまとめて引く、という順番になります。

② 全部原価計算との違い 必ず覚える

これまでNo.16〜18で見た計算は、固定費も含めて製品の原価にします(全部原価計算)。

違いが出るのは、作った数と売れた数がずれた時です。 同じ月に1,200個作って1,000個売ったとします(月初の在庫はなし)。固定製造間接費300,000円は、全部原価計算では作った1,200個で割って、1個あたり250円です。

項目 全部原価計算 直接原価計算
売上高 1,000,000 1,000,000
売上原価 650,000 400,000(変動費のみ)
変動販売費 100,000 100,000
固定製造間接費 (売上原価に含まれる) 300,000
固定販売費及び一般管理費 150,000 150,000
営業利益 100,000 50,000

営業利益は、全部原価計算が100,000円、直接原価計算が50,000円で、50,000円の差が出ます。 これは、在庫に残った固定費50,000円(200個×250円)の分です。全部原価計算では在庫に入って費用になりませんが、直接原価計算ではその期に全額費用になります。

③ 利益の差の調整 必ず覚える

2つの利益の差は、次の式で出ます。

全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+期末在庫に含まれる固定費-期首在庫に含まれる固定費

50,000+50,000-0=100,000円で、上の例と一致します。

作った数が売れた数より多ければ、期末在庫が増えて、全部原価計算の利益のほうが大きくなります。 作った数が売れた数より少なく在庫が減る時は、逆に全部原価計算の利益のほうが小さくなります。売れた数と作った数が同じなら、差は出ません。

○ よくある勘違い:直接原価計算の「直接」は、No.16の直接費・間接費の「直接」とは別の意味です。変動費のことと思ってください
○ 直接原価計算は、会社の外に出す決算書には使えません。社内で経営を考えるための計算です

第2章 CVP分析

① 損益分岐点 :利益がちょうどゼロの売上 必ず覚える

CVPは、原価(Cost)・営業量(Volume)・利益(Profit)の関係を調べる分析です。 最初に知りたいのは、赤字と黒字の境目になる売上、つまり損益分岐点です。

貢献利益で固定費をちょうど回収できた時が、損益分岐点です。

900個売れば、利益はちょうどゼロです。1個売れるごとに500円ずつ利益が増えていきます。

② 安全余裕率と目標利益 必ず覚える

実際の売上が損益分岐点よりどれだけ上にあるかを、安全余裕率で見ます。

安全余裕率=(実際の売上高-損益分岐点の売上高)÷実際の売上高

売上が1,000,000円の時は、(1,000,000-900,000)÷1,000,000=10%です。売上が10%下がっても、赤字にならない、という意味です。

目標とする利益がある時は、固定費にその利益を足して同じように割ります。

目標利益を達成する販売量=(固定費+目標利益)÷1個あたりの貢献利益

目標利益が100,000円なら、(450,000+100,000)÷500=1,100個です。

③ 費用の分解(高低点法) さらっと

問題によっては、費用の総額だけが与えられていて、変動費と固定費が分かれていません。 その時は、操業度の最高の月と最低の月を使って、変動費率を出します(高低点法)。

最高の月は操業度1,100時間で費用790,000円、最低の月は操業度700時間で費用550,000円とします。

最低の月で確かめると、600円×700時間+130,000円=550,000円で一致します。

貢献利益=売上-変動費。損益分岐点=固定費÷貢献利益(1個あたり、または率)。安全余裕率=(実際の売上-損益分岐点の売上)÷実際の売上。全部原価計算との利益の差は、期末在庫の固定費-期首在庫の固定費。

確認問題

問1 1個800円で売る商品の変動費は1個480円、固定費は月960,000円です。損益分岐点の販売量はどれですか。

問2 損益分岐点の売上高は2,400,000円、実際の売上高は3,000,000円です。安全余裕率はどれですか。

問3 当月、500個作って400個売りました(月初の在庫はなし)。固定製造間接費は200,000円です。全部原価計算と直接原価計算の営業利益について、正しいのはどれですか。

問4 1個800円で売る商品の変動費は1個480円、固定費は月960,000円です。営業利益320,000円を得るために必要な販売量はどれですか。

出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級の試験科目(工業簿記:直接原価計算・CVP分析)https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 。数値は説明用の架空の例。