日商簿記2級 最短合格講座

区分1 第1問 商業簿記の仕訳(20点)★★★

No.07 株式会社の純資産(増資・剰余金の配当・合併)

株式会社が株を発行してお金を集め、儲けを配当に回し、他の会社と合併する場面の仕訳を扱います。純資産の仕訳は数が少ないわりに毎回のように出ます。特に配当のときの準備金積立(1/10と1/4)と、合併ののれんは、計算の手順ごと覚えてください。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 設立と増資
  3. 第2章 剰余金の配当と準備金
  4. 第3章 合併
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 純資産 :会社の持ち物から借金を引いた残り

貸借対照表(会社の財産を1枚にした表)の右側の下の部分が、純資産の部です。 株主(会社に出資した人)が出したお金と、会社が稼いで貯めた利益が入っています。

仕訳でいえば、純資産が増える時は貸方(かしかた、右)、減る時は借方(かりかた、左)です。 資産と逆の方向になります。ここは3級でも出てきたので、不安ならNo.01に戻ってください。

② 純資産の部の中身 :3つのグループ

グループ 主な勘定 中身
資本金 資本金 株主が出したお金のうち、資本として固定した分
資本剰余金 資本準備金・その他資本剰余金 株主が出したお金のうち、資本金に入れなかった分
利益剰余金 利益準備金・任意積立金・繰越利益剰余金 会社が稼いで貯めた利益

利益剰余金の中の「繰越利益剰余金」は、毎年の利益が貯まっていく勘定で、配当の元手にもなります。 準備金は、将来の損失に備えて取っておくお金で、勝手に配当に回せません。

③ 払い込まれたお金は半分まで資本金にしなくてよい :会社法の決まり

株を発行して払い込まれたお金は、原則として全額を資本金にします。 ただし、会社法では、払込金額の2分の1までは資本金にせず、資本準備金にできます。

問題文には、「全額を資本金とする」「会社法が定める最低額を資本金とする」のどちらかが書いてあります。 最低額なら払込額の1/2が資本金で、残り半分が資本準備金です。

第1章 設立と増資

① 設立 :会社をつくる時の仕訳 必ず覚える

会社をつくるとき、株式を発行して、出資者から払込みを受けます。 1株5万円で100株発行し、全額が当座預金に払い込まれ、資本金は会社法が認める最低額にする場合です。

借方 金額 貸方 金額
株式の発行 当座預金 5,000,000 資本金 2,500,000
資本準備金 2,500,000

設立のために弁護士費用や登記費用を払ったときは、「創立費(そうりつひ)」という費用にします。 創立費30万円を現金で払った場合は、「創立費300,000/現金300,000」です。

② 増資 :新しく株を発行してお金を集める 必ず覚える

会社がお金を増やすために、新しく株を発行することを増資(ぞうし)と言います。 仕訳の形は設立と同じです。

新株200株を1株6万円で発行し、全額が当座預金に入り、資本金は会社法の最低額とした場合です。

借方 金額 貸方 金額
新株の発行 当座預金 12,000,000 資本金 6,000,000
資本準備金 6,000,000

株式を発行するときに払った手数料や広告費は、「株式交付費」という費用にします。 40万円を現金で払ったなら、「株式交付費400,000/現金400,000」です。

③ 3つの費用の使い分け さらっと

費用 いつの費用か
創立費 会社をつくるためにかかった費用
開業費 会社が営業を始めるまでにかかった費用
株式交付費 設立後に、新株を発行するためにかかった費用

設立のときの費用は創立費、設立後の増資のときは株式交付費と覚えてください。 開業費は、事務所の開設費用や開業前の広告費などです。ここは名前を区別できれば足ります。

○ 勘違いしやすい:資本準備金は「純資産」の勘定。費用や負債ではない
○ 払込みを受けるのは当座預金のことが多いが、現金・普通預金のこともある。問題文の指定に合わせる
○ 設立と増資の金額計算は、1株の金額×株数。最低額は、その半分

第2章 剰余金の配当と準備金

① 配当の仕訳 必ず覚える

会社が利益を株主に分けることを、配当(はいとう)と言います。 株主総会(かぶぬしそうかい)で配当が決まった時点で、会社は「払う義務」を負うので、すぐに仕訳を書きます。実際に払う時が、もう1回あります。

繰越利益剰余金から3,000,000円を配当し、あわせて利益準備金を200,000円積み立てるとします(積立額の計算は次の項目)。

借方 金額 貸方 金額
株主総会で配当が決まった 繰越利益剰余金 3,200,000 未払配当金 3,000,000
利益準備金 200,000
配当を当座預金から払った 未払配当金 3,000,000 当座預金 3,000,000

繰越利益剰余金が減る金額は、配当額と準備金の積立額の合計です。ここを忘れて、配当額だけ減らす誤りが多いです。

② 準備金の積立額 :1/10と、資本金の1/4 必ず覚える

配当をするときは、会社法のルールで、準備金を積み立てなければなりません。 積立額は、次の2つのうち、小さいほうです。

資本金1,000万円、資本準備金150万円、利益準備金80万円の会社が、繰越利益剰余金から300万円を配当する場合を計算します。

配当額の1/10は 3,000,000×1/10=300,000円です。 資本金の1/4は 10,000,000×1/4=2,500,000円で、すでに積まれた準備金は 1,500,000+800,000=2,300,000円なので、あと積める金額は 2,500,000-2,300,000=200,000円です。 小さいほうは200,000円で、これが積立額になります。

資本金の1/4にまだ余裕がある会社なら、配当額の1/10がそのまま積立額です。配当200万円なら、20万円を積みます。 また、積み立てる準備金は、繰越利益剰余金から配当するときは利益準備金です。その他資本剰余金から配当するときは資本準備金になります。

③ 当期純利益の振替と積立金 さらっと

決算で出た当期純利益は、損益勘定から繰越利益剰余金に振り替えます。損失が出たなら、左右が逆です。

借方 金額 貸方 金額
当期純利益600万円を振り替える 損益 6,000,000 繰越利益剰余金 6,000,000

利益の一部を、新しい設備の購入などのために取っておくこともあります。これを任意積立金と言い、勘定の名前は「新築積立金」「別途積立金」などです。

借方 金額 貸方 金額
株主総会で別途積立金100万円の積立てを決めた 繰越利益剰余金 1,000,000 別途積立金 1,000,000

繰越利益剰余金が赤字になった時に、別途積立金を取り崩して補う場合は、左右を逆にした「別途積立金/繰越利益剰余金」です。

第3章 合併

① 吸収合併とのれん 必ず覚える

他の会社を取り込む合併(がっぺい)で、取り込む側を存続会社、取り込まれる側を消滅会社と呼びます。 存続会社は、消滅会社の資産・負債を時価(今の値段)で受け入れ、その対価として自社の株を渡します。

受け入れた資産と負債の差額(純資産の時価)と、渡した株の価値との差が「のれん」です。 のれんは、会社の評判や技術などに払った上乗せ分で、無形固定資産として借方に書きます。

資産の時価500万円、負債の時価200万円の会社を吸収合併し、株式(時価380万円)を渡しました。資本金は200万円増やし、残りは資本準備金とします。

純資産の時価は 5,000,000-2,000,000=3,000,000円です。渡した株は3,800,000円なので、差額の800,000円がのれんです。

借方 金額 貸方 金額
合併 諸資産 5,000,000 諸負債 2,000,000
のれん 800,000 資本金 2,000,000
資本準備金 1,800,000

貸方の資本準備金は、渡した株の3,800,000円から、資本金2,000,000円を引いた金額です。 諸資産・諸負債は、複数の勘定をまとめて呼ぶ名前です。試験では「諸資産」で出ることが多いです。

② 負ののれん :安く手に入れた時 さらっと

渡した株の価値が、純資産の時価より低いときは、差額が逆向きに出ます。これを「負ののれん発生益」と言い、貸方に書く利益です。 上の例で、株式の時価が270万円だったとすると、純資産の時価300万円との差額は30万円です。

借方 金額 貸方 金額
合併 諸資産 5,000,000 諸負債 2,000,000
資本金 2,000,000
資本準備金 700,000
負ののれん発生益 300,000

借方5,000,000円と、貸方 2,000,000+2,000,000+700,000+300,000=5,000,000円が一致します。 発生した差額が、借方にあるか貸方にあるかで、のれんか負ののれんかが決まります。

③ 問題文の読み方 さらっと

合併の問題では、問題文に「資産の時価」「負債の時価」「株式の時価」「増加させる資本金の金額」が書いてあります。 この4つの数字を拾い、①の順番で、純資産の時価→のれんの金額→資本準備金の順に出します。

新しく会社をつくって合併する「新設合併」もありますが、2級では吸収合併がほとんどです。新設合併は深追いしません。

○ 勘違いしやすい:のれんは「資本金でも資本準備金でもない」。資産として借方に出る
○ 資産・負債は、消滅会社の帳簿の金額ではなく、時価で受け入れる
○ 株主資本等変動計算書(純資産の動きを表にした書類)での扱いは、No.15(後で出ます)

設立と増資は、払込額の半分までを資本準備金にできる。配当のときは、配当額の1/10か、資本金の1/4-準備金の合計の、小さいほうを利益準備金に積む。合併は、純資産の時価と渡した株の差が、借方に出ればのれん、貸方に出れば負ののれん発生益。

確認問題

問1 資本金1,000万円、資本準備金150万円、利益準備金80万円の会社が、株主総会で繰越利益剰余金から300万円の配当を決議した。正しい仕訳はどれか。準備金は、会社法で積み立てなければならない最低限度額を積み立てるものとする。

問2 新株200株を1株60,000円で発行し、全額が当座預金に払い込まれた。資本金は会社法が認める最低額とする。正しい仕訳はどれか。

問3 資産の時価が500万円、負債の時価が200万円のB社を吸収合併し、B社の株主に株式(時価380万円)を交付した。資本金は200万円増加させ、残りは資本準備金とする。正しい仕訳はどれか。

問4 次のうち、貸借対照表の純資産の部のうち「利益剰余金」に入る勘定はどれか。

出典:日本商工会議所「簿記 2級の試験科目・出題区分表」(株式会社会計・合併の範囲)https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 。準備金の積立額の考え方は会社法の規定に基づく。数字は説明用の架空の例。