有価証券は、他の会社の株式や、国・会社が出した債券(社債など)のことです。 会社は余ったお金で買ったり、取引先との関係のために持ったりします。
仕訳では、借方(かりかた=帳簿の左側)に有価証券の科目、貸方(かしかた=帳簿の右側)に支払ったお金の科目を書きます。 最初の購入だけなら、これまでの仕訳と同じ形です。
同じ株でも、「なぜ持っているか」で科目が変わり、決算での扱いも変わります。 先に全体の表を見てください。
| 持つ目的 | 科目 | 決算での扱い | 差額の行き先 |
|---|---|---|---|
| 短期で売って儲ける | 売買目的有価証券 | 時価に評価替え | 有価証券評価益・評価損(損益計算書) |
| 満期まで持つ債券 | 満期保有目的債券 | 償却原価法 | 有価証券利息(損益計算書) |
| 支配している会社の株 | 子会社株式・関連会社株式 | そのまま(原価) | 動かさない |
| 上の3つ以外 | その他有価証券 | 時価に評価替え | その他有価証券評価差額金(純資産) |
時価(じか)は、決算日にその証券を売ったらいくらになるか、という値段です。 取得した時の値段は、取得原価と呼びます。
| 何のことか | |
|---|---|
| 子会社株式 | 他の会社の株の過半数を持ち、支配している会社の株(目安として議決権の50%超) |
| 関連会社株式 | 支配まではしないが、大きな影響を与えられる会社の株(目安として20%以上) |
| 投資有価証券 | 貸借対照表に載せる時の、長く持つ有価証券の区分名 |
子会社・関連会社の詳しい話は、連結会計(No.13、後で出ます)で扱います。 ここでは「持ち株の割合が大きい会社の株は、時価評価をしない」とだけ覚えてください。
買った時は、買った値段(取得原価)で記録します。
A社株式を100株、1株1,000円で買い、代金は普通預金から払いました。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 |
決算日に、A社株式の時価が1株1,100円になっていたとします。 帳簿の100,000円を、時価110,000円に合わせます。差の10,000円が評価益です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 10,000 | 有価証券評価益 | 10,000 |
売るとき(40株を1株1,200円で売却)は、帳簿価額との差が売却益になります。 評価替えのあとの帳簿は1株1,100円なので、40株で44,000円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 48,000 | 売買目的有価証券 | 44,000 |
| 有価証券売却益 | 4,000 |
評価益・評価損は「持っているだけ」の値動き、売却益・売却損は「売った時」の損益です。 科目の名前が似ているので、まず今回が決算なのか売却なのかを見分けます。
○ よくある勘違い:評価益が出ても現金は増えていません。帳簿の数字を時価に合わせただけです
○ 買う時の手数料の扱いは、問題文の指示に従います。この単元の例では手数料はありません
○ 売却益か評価益かは、問題文の「売却した」「決算日の時価は」で見分けます
債券は、満期になると額面(がくめん、券面に書いてある金額)が返ってきます。 その債券を額面より安く買った場合、満期までの間に、その差額が少しずつ利息の一部になっていくと考えます。
この考え方で、帳簿の金額を毎年少しずつ額面に近づけていく方法が、償却原価法です。 2級では、毎年同じ金額ずつ増やす定額法で出ます。
例です。額面100,000円の債券を、X1年4月1日に額面100円につき98円で買いました。満期は5年後で、年2%の利息が毎年入ります。決算は3月31日です。
買った時は、実際に払った98,000円で記録します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 満期保有目的債券 | 98,000 | 普通預金 | 98,000 |
利息が入った時は、額面に利率をかけた金額です。100,000円×2%=2,000円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 2,000 | 有価証券利息 | 2,000 |
決算では、額面と取得価額の差を月数で割って、この1年分を足します。 差額は100,000円−98,000円=2,000円。5年(60か月)の12か月分なので、2,000円×12/60=400円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 満期保有目的債券 | 400 | 有価証券利息 | 400 |
これで帳簿は98,400円になり、毎年少しずつ100,000円に近づいていきます。
○ 取得が期の途中の時は、決算までの月数だけ数えます。たとえば10月1日に取得して満期が5年後の9月30日なら、決算までは6か月なので、2,000円×6/60=200円です
○ 額面より高く買った場合も、同じ考え方で逆向きに減らしていきますが、出題は安く買う形がほとんどです
買った時の値段のまま、決算でも動かしません。時価が下がっても仕訳はありません(大きく下がった場合の処理は、この単元では扱いません)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 子会社株式 | 3,000,000 | 普通預金 | 3,000,000 |
売買目的でも満期保有でも子会社でもない株式や債券は、この区分です。たとえば取引先との関係で持っている株がそうです。
時価に評価替えするところまでは売買目的有価証券と同じです。違うのは差額の行き先で、損益計算書には出さず、貸借対照表の純資産に「その他有価証券評価差額金」として載せます。 2級で出るのは、評価差額をそのまま純資産に入れる全部純資産直入法(ぜんぶじゅんしさんちょくにゅうほう)です。
例です。200,000円で買ったB社株式の時価が、決算日に230,000円になりました。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他有価証券 | 30,000 | その他有価証券評価差額金 | 30,000 |
時価が下がって170,000円になった時は、左右が逆になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 30,000 | その他有価証券 | 30,000 |
その他有価証券は、翌期の最初の日に、前の期の評価替えをいったん元に戻します。これを洗替(あらいがえ)といいます。 評価益30,000円を出していた場合、戻す仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 30,000 | その他有価証券 | 30,000 |
これで帳簿の金額が取得原価の200,000円に戻ります。 その後、240,000円で売却したとすると、売却益は取得原価との差の40,000円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 240,000 | その他有価証券 | 200,000 |
| 有価証券売却益 | 40,000 |
○ 売却益の科目名は、問題文の選択肢に従います。有価証券売却益・投資有価証券売却益など、試験によって表れる名前が違います
○ 洗替をしない方式(切放し方式)で出る場合は、問題文に書かれます。その時は戻す仕訳を書かず、評価替え後の金額を帳簿価額として売却を計算します
○ 評価差額金は純資産の科目です。税金をどう扱うかは、No.09(このあと出ます)の税効果会計で説明します
利息つきの債券は、年2回など決まった日(利払日)に、その期間の利息がまとめて払われます。 売買が利払日と利払日の間に行われた場合、前の利払日の翌日から売買日までの利息は、売る側のものです。ただし次の利払日には、買った人が全額を受け取ってしまいます。 そこで買う側が、売る側にこの日割りの利息を先に払います。これが端数利息です。
端数利息の計算は、額面×年利率×日数/365日です。
例です。額面1,000,000円の債券(年利率3.65%)を、額面100円につき98円で買いました。前の利払日の翌日から売買日までは91日でした。
1,000,000円×3.65%×91/365=9,100円
債券そのものの代金は980,000円です。9,100円は債券の代金ではないので、有価証券の科目には入れません。借方は有価証券利息にします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 980,000 | 普通預金 | 989,100 |
| 有価証券利息 | 9,100 |
次の利払日には半年分の利息が全額入ります。そのうち9,100円は、先に払った分の取り返しになります。
売る側は逆になります。先ほどの債券を、帳簿価額975,000円で持っていた人が、同じ条件で売った場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 989,100 | 売買目的有価証券 | 975,000 |
| 有価証券売却益 | 5,000 | ||
| 有価証券利息 | 9,100 |
○ 日数の数え方は、問題文の指示に従います(売買日を含めるかなど)
○ 端数利息は、買う側は借方、売る側は貸方の有価証券利息。ここを逆に書くのがよくある間違いです
○ 日割りは365日で計算するのが基本です。月割りで指示される場合もあります
持つ目的で科目が4つに分かれる。売買目的は時価評価して損益へ、満期保有は償却原価法で少しずつ利息へ、子会社・関連会社の株は動かさず、その他有価証券は時価評価して差額は純資産へ。債券を利払日の途中で買ったら、日割りの端数利息を有価証券利息(借方)で払う。
問1 決算日に、売買目的で持っているC社株式(帳簿価額100,000円)の時価が108,000円になっていました。正しい仕訳はどれですか。
問2 当期の10月1日に、額面500,000円の債券を額面100円につき97円で買い、満期保有目的としました。満期はちょうど5年後の9月30日です。決算日(3月31日)の仕訳で、償却原価法の金額はどれですか。
問3 300,000円で買ったD社株式(取引先との関係で保有)を、その他有価証券として持っています。決算日の時価は270,000円で、全部純資産直入法で処理します。正しい仕訳はどれですか。
問4 額面2,000,000円の債券(年利率3.65%)を、額面100円につき99円で買い、代金は端数利息とあわせて普通預金から払いました。前の利払日の翌日から売買日までは73日です。正しい仕訳はどれですか。
出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級 試験科目(出題区分表)https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2。有価証券の区分・評価方法・端数利息は、一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に基づく。数字は説明用の架空の例。