日商簿記2級 最短合格講座

区分1 第1問 商業簿記の仕訳(20点)★★

No.08 有価証券

株式や社債を持った時の仕訳です。第1問の仕訳で1問出ることがあり、出題の頻度はふつうです。持つ目的で4つに分かれるので、この単元では「目的ごとに、決算でどう扱うか」を表で押さえる所に力を入れます。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 売買目的有価証券:時価に合わせて毎期評価する
  3. 第2章 満期保有目的債券:差額を少しずつ利息に変える
  4. 第3章 子会社株式とその他有価証券
  5. 第4章 端数利息:債券を途中で売買する時の利息
  6. 確認問題

第0章 前提知識

① 有価証券(ゆうかしょうけん) :会社が持つ株式や債券

有価証券は、他の会社の株式や、国・会社が出した債券(社債など)のことです。 会社は余ったお金で買ったり、取引先との関係のために持ったりします。

仕訳では、借方(かりかた=帳簿の左側)に有価証券の科目、貸方(かしかた=帳簿の右側)に支払ったお金の科目を書きます。 最初の購入だけなら、これまでの仕訳と同じ形です。

② 持つ目的で4つに分ける :決算の扱いがここで変わる

同じ株でも、「なぜ持っているか」で科目が変わり、決算での扱いも変わります。 先に全体の表を見てください。

持つ目的 科目 決算での扱い 差額の行き先
短期で売って儲ける 売買目的有価証券 時価に評価替え 有価証券評価益・評価損(損益計算書)
満期まで持つ債券 満期保有目的債券 償却原価法 有価証券利息(損益計算書)
支配している会社の株 子会社株式・関連会社株式 そのまま(原価) 動かさない
上の3つ以外 その他有価証券 時価に評価替え その他有価証券評価差額金(純資産)

時価(じか)は、決算日にその証券を売ったらいくらになるか、という値段です。 取得した時の値段は、取得原価と呼びます。

③ 似た言葉との違い

何のことか
子会社株式 他の会社の株の過半数を持ち、支配している会社の株(目安として議決権の50%超)
関連会社株式 支配まではしないが、大きな影響を与えられる会社の株(目安として20%以上)
投資有価証券 貸借対照表に載せる時の、長く持つ有価証券の区分名

子会社・関連会社の詳しい話は、連結会計(No.13、後で出ます)で扱います。 ここでは「持ち株の割合が大きい会社の株は、時価評価をしない」とだけ覚えてください。

第1章 売買目的有価証券:時価に合わせて毎期評価する

① 買う・売る・決算 必ず覚える

買った時は、買った値段(取得原価)で記録します。

A社株式を100株、1株1,000円で買い、代金は普通預金から払いました。

借方 金額 貸方 金額
売買目的有価証券 100,000 普通預金 100,000

決算日に、A社株式の時価が1株1,100円になっていたとします。 帳簿の100,000円を、時価110,000円に合わせます。差の10,000円が評価益です。

借方 金額 貸方 金額
売買目的有価証券 10,000 有価証券評価益 10,000

売るとき(40株を1株1,200円で売却)は、帳簿価額との差が売却益になります。 評価替えのあとの帳簿は1株1,100円なので、40株で44,000円です。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 48,000 売買目的有価証券 44,000
有価証券売却益 4,000

評価益・評価損は「持っているだけ」の値動き、売却益・売却損は「売った時」の損益です。 科目の名前が似ているので、まず今回が決算なのか売却なのかを見分けます。

○ よくある勘違い:評価益が出ても現金は増えていません。帳簿の数字を時価に合わせただけです
○ 買う時の手数料の扱いは、問題文の指示に従います。この単元の例では手数料はありません
○ 売却益か評価益かは、問題文の「売却した」「決算日の時価は」で見分けます

第2章 満期保有目的債券:差額を少しずつ利息に変える

① 償却原価法(しょうきゃくげんかほう) :安く買った分を毎年少しずつ増やす 必ず覚える

債券は、満期になると額面(がくめん、券面に書いてある金額)が返ってきます。 その債券を額面より安く買った場合、満期までの間に、その差額が少しずつ利息の一部になっていくと考えます。

この考え方で、帳簿の金額を毎年少しずつ額面に近づけていく方法が、償却原価法です。 2級では、毎年同じ金額ずつ増やす定額法で出ます。

例です。額面100,000円の債券を、X1年4月1日に額面100円につき98円で買いました。満期は5年後で、年2%の利息が毎年入ります。決算は3月31日です。

買った時は、実際に払った98,000円で記録します。

借方 金額 貸方 金額
満期保有目的債券 98,000 普通預金 98,000

利息が入った時は、額面に利率をかけた金額です。100,000円×2%=2,000円です。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 2,000 有価証券利息 2,000

決算では、額面と取得価額の差を月数で割って、この1年分を足します。 差額は100,000円−98,000円=2,000円。5年(60か月)の12か月分なので、2,000円×12/60=400円です。

借方 金額 貸方 金額
満期保有目的債券 400 有価証券利息 400

これで帳簿は98,400円になり、毎年少しずつ100,000円に近づいていきます。

○ 取得が期の途中の時は、決算までの月数だけ数えます。たとえば10月1日に取得して満期が5年後の9月30日なら、決算までは6か月なので、2,000円×6/60=200円です
○ 額面より高く買った場合も、同じ考え方で逆向きに減らしていきますが、出題は安く買う形がほとんどです

第3章 子会社株式とその他有価証券

① 子会社株式・関連会社株式 :評価替えしない さらっと

買った時の値段のまま、決算でも動かしません。時価が下がっても仕訳はありません(大きく下がった場合の処理は、この単元では扱いません)。

借方 金額 貸方 金額
子会社株式 3,000,000 普通預金 3,000,000

② その他有価証券 :時価評価して、差額は純資産へ 必ず覚える

売買目的でも満期保有でも子会社でもない株式や債券は、この区分です。たとえば取引先との関係で持っている株がそうです。

時価に評価替えするところまでは売買目的有価証券と同じです。違うのは差額の行き先で、損益計算書には出さず、貸借対照表の純資産に「その他有価証券評価差額金」として載せます。 2級で出るのは、評価差額をそのまま純資産に入れる全部純資産直入法(ぜんぶじゅんしさんちょくにゅうほう)です。

例です。200,000円で買ったB社株式の時価が、決算日に230,000円になりました。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券 30,000 その他有価証券評価差額金 30,000

時価が下がって170,000円になった時は、左右が逆になります。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価差額金 30,000 その他有価証券 30,000

③ 翌期首の洗替(あらいがえ)と売却 必ず覚える

その他有価証券は、翌期の最初の日に、前の期の評価替えをいったん元に戻します。これを洗替(あらいがえ)といいます。 評価益30,000円を出していた場合、戻す仕訳は次のとおりです。

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価差額金 30,000 その他有価証券 30,000

これで帳簿の金額が取得原価の200,000円に戻ります。 その後、240,000円で売却したとすると、売却益は取得原価との差の40,000円です。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 240,000 その他有価証券 200,000
有価証券売却益 40,000

○ 売却益の科目名は、問題文の選択肢に従います。有価証券売却益・投資有価証券売却益など、試験によって表れる名前が違います
○ 洗替をしない方式(切放し方式)で出る場合は、問題文に書かれます。その時は戻す仕訳を書かず、評価替え後の金額を帳簿価額として売却を計算します
○ 評価差額金は純資産の科目です。税金をどう扱うかは、No.09(このあと出ます)の税効果会計で説明します

第4章 端数利息:債券を途中で売買する時の利息

① 端数利息(はすうりそく) :前の利払日から今日までの利息 必ず覚える

利息つきの債券は、年2回など決まった日(利払日)に、その期間の利息がまとめて払われます。 売買が利払日と利払日の間に行われた場合、前の利払日の翌日から売買日までの利息は、売る側のものです。ただし次の利払日には、買った人が全額を受け取ってしまいます。 そこで買う側が、売る側にこの日割りの利息を先に払います。これが端数利息です。

端数利息の計算は、額面×年利率×日数/365日です。

例です。額面1,000,000円の債券(年利率3.65%)を、額面100円につき98円で買いました。前の利払日の翌日から売買日までは91日でした。

1,000,000円×3.65%×91/365=9,100円

債券そのものの代金は980,000円です。9,100円は債券の代金ではないので、有価証券の科目には入れません。借方は有価証券利息にします。

借方 金額 貸方 金額
売買目的有価証券 980,000 普通預金 989,100
有価証券利息 9,100

次の利払日には半年分の利息が全額入ります。そのうち9,100円は、先に払った分の取り返しになります。

売る側は逆になります。先ほどの債券を、帳簿価額975,000円で持っていた人が、同じ条件で売った場合です。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 989,100 売買目的有価証券 975,000
有価証券売却益 5,000
有価証券利息 9,100

○ 日数の数え方は、問題文の指示に従います(売買日を含めるかなど)
○ 端数利息は、買う側は借方、売る側は貸方の有価証券利息。ここを逆に書くのがよくある間違いです
○ 日割りは365日で計算するのが基本です。月割りで指示される場合もあります

持つ目的で科目が4つに分かれる。売買目的は時価評価して損益へ、満期保有は償却原価法で少しずつ利息へ、子会社・関連会社の株は動かさず、その他有価証券は時価評価して差額は純資産へ。債券を利払日の途中で買ったら、日割りの端数利息を有価証券利息(借方)で払う。

確認問題

問1 決算日に、売買目的で持っているC社株式(帳簿価額100,000円)の時価が108,000円になっていました。正しい仕訳はどれですか。

問2 当期の10月1日に、額面500,000円の債券を額面100円につき97円で買い、満期保有目的としました。満期はちょうど5年後の9月30日です。決算日(3月31日)の仕訳で、償却原価法の金額はどれですか。

問3 300,000円で買ったD社株式(取引先との関係で保有)を、その他有価証券として持っています。決算日の時価は270,000円で、全部純資産直入法で処理します。正しい仕訳はどれですか。

問4 額面2,000,000円の債券(年利率3.65%)を、額面100円につき99円で買い、代金は端数利息とあわせて普通預金から払いました。前の利払日の翌日から売買日までは73日です。正しい仕訳はどれですか。

出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級 試験科目(出題区分表)https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2。有価証券の区分・評価方法・端数利息は、一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に基づく。数字は説明用の架空の例。