親会社P社と子会社S社のあいだの、商品の売買・お金の貸し借り・利息の支払いなどを、内部取引といいます。 P社の帳簿では売上、S社の帳簿では仕入になっていますが、グループ全体で見れば、自分たちの中で商品やお金が移っただけで、外の誰とも取引していません。
だから、連結の決算書では、内部取引を丸ごと消します。 連結の基本は No.13 で見ました。この単元は、その続きです。
P社がS社に商品を売って、P社が利益を出したとします。 S社がその商品を外のお客さんに売り切っていれば、グループとして本当に稼いだことになります。ところが、S社がまだ持っていると、グループの中で動いただけで、利益は確定していません。
この、期末にまだグループの中に残っている商品に含まれる利益を、未実現利益といいます。連結では、この利益を消します。
| 売る側 | 買う側 | 非支配株主への影響 | |
|---|---|---|---|
| ダウンストリーム(下り) | 親会社P社 | 子会社S社 | 利益は親が稼いだ物なので、非支配株主には回さない |
| アップストリーム(上り) | 子会社S社 | 親会社P社 | 利益は子会社が稼いだ物なので、非支配株主にも負担させる |
売る側が親か子かで、仕訳が1本変わります。問題文で「どちらからどちらに売ったか」を、まず探してください。
この章では、次の例で進めます。数字は説明用の架空の例です。 P社は、S社に商品を500,000円分売りました。P社には売掛金150,000円があり、S社にはその分の買掛金150,000円があります。
P社の売上500,000円と、S社の仕入500,000円(損益計算書では売上原価)を、両方消します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 内部取引の相殺 | 売上高 | 500,000 | 売上原価 | 500,000 |
売上高が減り、売上原価も同じだけ減るので、売上総利益の金額は動きません。 動かさないのは、この取引で、グループの利益が出ているわけではないからです。
P社の売掛金150,000円と、S社の買掛金150,000円も、グループの中の貸し借りなので、両方消します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 債権債務の相殺 | 買掛金 | 150,000 | 売掛金 | 150,000 |
同じ形で消す物が、いくつかあります。
| 親の帳簿 | 子の帳簿 |
|---|---|
| 売掛金・受取手形・貸付金 | 買掛金・支払手形・借入金 |
| 受取利息・受取配当金 | 支払利息・剰余金の配当(No.13) |
| 未収収益 | 未払費用 |
左の列の勘定をP社が持っているなら右の列をS社が持っている、と対で消します。
消した売掛金150,000円に対して、P社が貸倒引当金を設定していた場合、その引当金は不要になります。 P社が2%(3,000円)設定していたなら、それも消します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 貸倒引当金の修正 | 貸倒引当金 | 3,000 | 貸倒引当金繰入 | 3,000 |
連結では、グループの中の売掛金は「存在しない」ので、貸倒れも起きません。引当金とその費用を、セットで消します。
○ 子会社が設定した引当金を消すと、子会社の利益が増えるので、非支配株主の取り分も別に直します。例:修正が3,000円で非支配株主の持分が20%なら、600円。(借)非支配株主に帰属する当期純利益 600 (貸)非支配株主持分 600
○ 前の年に設定した引当金の扱いは、深追いしなくて大丈夫です
P社がS社に売った商品のうち、期末にS社に120,000円分(S社の仕入価格)が残っています。P社の売上総利益率は20%です。
未実現利益=120,000×20%=24,000円。 この利益を消し、商品の金額も、同じだけ減らします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 未実現利益の消去 | 売上原価 | 24,000 | 商品 | 24,000 |
S社が持つ商品は、P社が利益を乗せた分だけ、高く見えています。その分を商品から引き、反対側の借方は売上原価を増やして、利益を減らします。
ダウンストリームは、親が稼いだ利益なので、これで終わりです。非支配株主には関係しません。
売る側が子会社の時は、同じ金額の未実現利益24,000円を、まず同じ仕訳で消します。 加えて、その利益は子会社が稼いだものなので、非支配株主にも負担させます。非支配株主の持分が20%なら、24,000×20%=4,800円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 未実現利益の消去 | 売上原価 | 24,000 | 商品 | 24,000 |
| 非支配株主への配分 | 非支配株主持分 | 4,800 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | 4,800 |
非支配株主に帰属する当期純利益は、No.13 で見たとおり、もともと子会社の利益の20%でした。 未実現利益の分だけ子会社の利益が減ったので、非支配株主の取り分も同じ割合で減らす、という仕訳です。
前の年の期末商品に含まれていた未実現利益は、翌年に商品が外に売れた時点で、本当の利益になります。 翌年の連結では、次の2つを入れます。
ダウンストリームの場合を、まとめた形で見ます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
|---|---|---|---|---|
| 開始仕訳+実現 | 利益剰余金当期首残高 | 24,000 | 売上原価 | 24,000 |
前の年に消した24,000円を利益剰余金の期首の側で引き受け、同じ金額を売上原価から引くことで、売れた分の利益を今年の利益に戻しています。 アップストリームの場合は、これに非支配株主の分(4,800円)の仕訳が加わります。細かい型は、問題文の指示に従う程度で足ります。
連結精算表は、P社とS社の金額を並べ、修正を足し引きして、連結の金額を出す表です。ここまでの例(売上500,000円、売掛金150,000円、未実現利益24,000円)をそのまま表にします。
| 科目 | P社 | S社 | 合計 | 修正 借方 | 修正 貸方 | 連結 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,500,000 | 900,000 | 2,400,000 | 500,000 | 1,900,000 | |
| 売上原価 | 900,000 | 700,000 | 1,600,000 | 24,000 | 500,000 | 1,124,000 |
| 商品 | 200,000 | 300,000 | 500,000 | 24,000 | 476,000 | |
| 売掛金 | 600,000 | 400,000 | 1,000,000 | 150,000 | 850,000 | |
| 買掛金 | 300,000 | 500,000 | 800,000 | 150,000 | 650,000 |
表の読み方は、行ごとの次のルールです。費用と資産の行は「借方の修正を足し、貸方の修正を引く」。収益と負債と純資産の行は、その反対です。 売上高は収益なので、借方の500,000円を引いて1,900,000円。売上原価は費用なので、借方の24,000円を足し、貸方の500,000円を引いて1,124,000円になります。
連結の売上総利益は 1,900,000-1,124,000=776,000円で、合計の800,000円(2,400,000-1,600,000)から、未実現利益の24,000円だけ減っています。
修正仕訳は、次の順で入れると、抜けが出にくくなります。
先の2つは No.13 の内容です。この単元の3〜5が、今日の中身です。
連結精算表は行数が多く、全部の行を完璧に出すのは大変です。 修正仕訳を1本ずつ書き出し、その仕訳に出てくる行から埋めていけば、分かった所は点になります。分からない修正は、飛ばして次へ進んで構いません。
内部取引は、売上高と売上原価、債権と債務を対で消す。期末に残る商品の未実現利益は、売上原価の増加と商品の減少で消す。親が売ったとき(ダウン)は非支配に回さず、子が売ったとき(アップ)は非支配にも配分する。
問1 P社は、S社に商品300,000円を売り上げました(S社は仕入に計上)。連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。
問2 P社のS社に対する売掛金200,000円に、P社が1%(2,000円)の貸倒引当金を設定していました。売掛金と買掛金の相殺は済んでいます。引当金についての連結修正仕訳として、正しいのはどれですか。
問3 P社(売上総利益率25%)が、S社(P社の持分70%)に売った商品のうち、期末にS社に80,000円(S社の仕入価格)が残っています。未実現利益の消去として、正しいのはどれですか。
問4 S社(P社の持分70%)が、P社に売った商品のうち、期末にP社に80,000円(P社の仕入価格)が残っています。S社の売上総利益率は25%です。未実現利益の消去として、正しいのはどれですか。
出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級(試験科目・出題区分表、https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 )。数字は説明用の架空の例。