日商簿記2級 最短合格講座

区分3 第4問・第5問 工業簿記(40点)★★★

No.16 工業簿記の全体像(勘定の流れと費目別計算)

第4問(工業簿記の仕訳と原価計算)と第5問の土台になる単元です。毎回必ず出ます。商業簿記とは考え方が違うので、ここは勘定の流れを頭に入れるところから、しっかりやります。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 勘定の流れ
  3. 第2章 材料費と予定価格
  4. 第3章 製造原価報告書
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 工業簿記 :作る会社のための簿記

商業簿記は、買った物をそのまま売る会社の簿記でした。 工業簿記は、材料を買って、工場で作って、できた製品を売る会社の簿記です。

あなたの会社でいえば、物販は買って売るので商業簿記の世界です。 工業簿記は、「作る」が間に入った分だけ、記録する勘定が増えます。

そして一番の目的は、製品1個あたりにいくらかかったか(原価)を出すことです。 これを原価計算といいます。第4問・第5問の計算は、ほとんどがこの原価を出す問題です。

② 原価の3要素 :材料費・労務費・経費

製品を作るためにかかったお金は、3つに分けます。

種類 何のことか 例
材料費 材料を使った分 部品・原料・工場で使う消耗品
労務費 工場で働く人に払う分 賃金・工場の給料
経費 上の2つ以外 電力料・減価償却費・外注加工賃

③ 直接費と間接費 :製品に結びつけられるか

材料費・労務費・経費は、さらに2つに分かれます。

直接費は、どの製品にいくらかかったかがはっきり分かる物です。 間接費は、複数の製品のために使われていて、1つの製品に結びつけられない物です。

間接費は、いったん「製造間接費」という勘定に集めておいて、後でルールに従って各製品に割り振ります。 割り振り方はNo.17(後で出ます)でやります。この単元では、集めるところまでで十分です。

第1章 勘定の流れ

① 材料 → 仕掛品 → 製品 → 売上原価 必ず覚える

この単元でいちばん大事な図です。

材料・賃金・経費 → 仕掛品 → 製品 → 売上原価

材料や賃金は、使った瞬間に仕掛品へ移ります。 できあがったら仕掛品から製品へ、売れたら製品から売上原価へ移ります。 お金が出ていくのではなく、原価が勘定のあいだを順に移っていく、と考えると迷いません。

② 費目ごとの仕訳 必ず覚える

次の架空の事例で、1つずつ見ます。借方(かりかた=左)と貸方(かしかた=右)の金額は、毎回同じになっています。

材料を買った(掛け) 63,000円

借方 金額 貸方 金額
材料 63,000 買掛金 63,000

材料を使った 51,500円(直接材料費41,200円、間接材料費10,300円)

借方 金額 貸方 金額
仕掛品 41,200 材料 51,500
製造間接費 10,300

直接費は仕掛品へ、間接費は製造間接費へ。これが基本の振り分けです。

賃金を払った 328,000円。そのうち直接作業分307,500円、間接作業分20,500円

借方 金額 貸方 金額
賃金 328,000 現金預金 328,000
借方 金額 貸方 金額
仕掛品 307,500 賃金 328,000
製造間接費 20,500

1つ目が支払い、2つ目が「作業に使った」という振り分けです。

経費 外注加工賃15,000円(直接経費)、電力料8,000円(現金払い)、減価償却費12,000円

借方 金額 貸方 金額
仕掛品 15,000 現金預金 15,000
製造間接費 20,000 現金預金 8,000
減価償却累計額 12,000

製造間接費を仕掛品へ割り振った 50,800円(10,300+20,500+20,000)

借方 金額 貸方 金額
仕掛品 50,800 製造間接費 50,800

ここでは実際に発生した額をそのまま割り振っています。予定の率で割り振るやり方は、No.17(後で出ます)で出てきます。あらかじめ決めた率で先に割り振る方法、とだけ押さえてください。

③ 完成と販売 必ず覚える

仕掛品の勘定は、月初に30,000円あり、ここまでで次のように増えていました。

30,000+41,200+307,500+15,000+50,800=444,500円

このうち380,000円分が完成し、残り64,500円が月末の仕掛品として残ったとします。

借方 金額 貸方 金額
製品 380,000 仕掛品 380,000

製品は月初に70,000円、月末に90,000円残っていたとすると、売れた分の原価は70,000+380,000-90,000=360,000円です。売価は500,000円(掛け)とします。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 500,000 売上 500,000
売上原価 360,000 製品 360,000

○ よくある勘違い:材料を買った時点では、仕掛品には入りません。材料の勘定に入り、使った時に初めて仕掛品へ移ります
○ 本番の仕訳は、勘定科目を選ぶ形式です。「どの勘定からどの勘定へ移ったか」を言葉で言えれば選べます
○ 損益計算書の売上原価の考え方は、No.03で扱った流れの工場版です

第2章 材料費と予定価格

① 使った材料の単価の決め方 さらっと

材料は、買う時期によって単価が違うことがあります。 使った分にどの単価を当てるかで、消費額が変わります。

材料の期首(月初)が100個で単価200円、当月に300個を単価210円で仕入れ、250個を使ったとします。

どちらを使うかは問題文に書いてあります。計算の手順を知っていれば十分です。

② 予定価格で材料を使う 必ず覚える

実際の単価は、月が終わらないと確定しないことがあります。 そこで、あらかじめ決めた予定の単価(予定消費単価)で、使った分を先に計算する会社があります。

上の例で、予定の単価が205円だったとします。 250個を使った予定の消費額は250個×205円=51,250円です。実際に使った額は51,500円なので、その差を別に記録します。

実際-予定=51,500-51,250=250円。実際のほうが多いので、不利な差異(借方差異)です。

借方 金額 貸方 金額
仕掛品・製造間接費(予定で計算した額) 51,250 材料 51,250
材料消費価格差異 250 材料 250

差異の向きは、実際が予定(標準)より多くかかったら借方、少なくすんだら貸方、と固定して覚えます。

③ 予定賃率で賃金を使う 必ず覚える

賃金も同じ考え方です。 予定の賃率(1時間あたりの賃金)が1,000円、当月の作業時間が合計320時間(直接300時間、間接20時間)、実際に払った賃金が328,000円とします。

予定の消費額は320時間×1,000円=320,000円です。実際の328,000円との差が8,000円で、これが賃率差異(借方)です。

借方 金額 貸方 金額
仕掛品 300,000 賃金 320,000
製造間接費 20,000
賃率差異 8,000 賃金 8,000

材料と賃金の差異は、月末に原価差異として整理します。この単元では「差異を別の勘定に分ける」ところまでで十分です。

○ 帳簿の数量より実際の在庫が少ない場合(棚卸減耗)の処理は、問題文の指示に従います 深追いしない
○ 標準原価を使う場合の差異は、No.19(後で出ます)でまとめて扱います

第3章 製造原価報告書

① 製造原価報告書 :作るのにいくらかかったかの1枚表 必ず覚える

損益計算書は、売上から費用を引いて利益を見る表でした。 製造原価報告書は、その中の「売上原価」のうち、作る部分だけを詳しく書いた表です。

先ほどの事例を並べると、次のようになります。材料の月初は20,000円、月末は31,500円とします。

項目 金額
材料費(20,000+63,000-31,500) 51,500
労務費 328,000
経費(15,000+8,000+12,000) 35,000
当期総製造費用 414,500
期首仕掛品棚卸高 30,000
合計 444,500
期末仕掛品棚卸高 64,500
当期製品製造原価 380,000

計算の流れは、「材料費+労務費+経費で総製造費用を出し、期首の仕掛品を足し、期末の仕掛品を引く」です。 当期製品製造原価は、仕掛品から製品に移った380,000円と一致しています。

② 損益計算書とのつながり さらっと

損益計算書の売上原価は、期首製品棚卸高+当期製品製造原価-期末製品棚卸高、で出ます。 ここに、先ほどの380,000円がそのまま入ります。70,000+380,000-90,000=360,000円で、さきほどの売上原価と同じです。

材料・賃金・経費は使った時に仕掛品(直接費)か製造間接費(間接費)に移る。完成したら製品へ、売れたら売上原価へ。予定の価格と実際の差は、差異として別に記録する。製造原価報告書は「総製造費用+期首仕掛品-期末仕掛品=製品製造原価」。

確認問題

問1 工場で材料を使いました。直接材料費は80,000円、間接材料費は15,000円です。正しい仕訳はどれですか。

問2 工場で働く人の賃金を処理します。直接作業の分が180,000円、間接作業の分が20,000円でした。正しい仕訳はどれですか。

問3 次の資料から、当期製品製造原価を求めます。材料の月初10,000円、仕入90,000円、月末20,000円。労務費150,000円。経費40,000円。期首仕掛品30,000円、期末仕掛品50,000円。いくらですか。

問4 材料の予定消費単価は1個50円、実際は52円でした。2,000個を使い、予定の単価で消費額を計算して仕掛品に移したとき、差異の仕訳はどれですか。

出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級の試験科目(工業簿記:費目別計算・製造原価報告書)https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 。数値は説明用の架空の例。