オーダーメイドの家具や機械のように、注文ごとに違う物を作る会社の計算方法です。 注文ごとに「製造指図書(せいぞうさしずしょ)」という番号つきの指示書を出し、その番号ごとに原価を集めます。
指図書ごとの原価を書いた表が、原価計算表です。 完成した指図書の合計が製品に、まだできていない指図書の合計が仕掛品になります。
No.16で、費用は直接費と間接費に分かれると言いました。 個別原価計算では、扱い方がはっきり分かれます。
この単元の中心は、間接費(製造間接費)をどう割り振るかです。
工場を部署に分けて計算することを、部門別計算といいます。部署には2種類あります。
補助部門にかかった費用は、最終的に製造部門へ割り振って、そこから製品に付けます。
製造間接費は、月が終わらないと実際の金額が分かりません。 でも、製品はその前に完成して出荷されます。そこで、年のはじめに決めた予定の率で、先に割り振ります。
予定配賦率は、次の式で出します。
予定配賦率=年間の製造間接費予算÷年間の基準操業度
基準操業度は、1年間に見込む作業量のことで、直接作業時間などを使います。
例:年間予算6,000,000円、年間の直接作業時間12,000時間とすると、予定配賦率は1時間あたり500円です。
割り振る額は、予定配賦率×実際の作業時間です。
当月の実際の直接作業時間が、指図書#101で400時間、#102で650時間、合計1,050時間だったとします。
| 指図書 | 直接材料費 | 直接労務費 | 製造間接費(500円×時間) | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| #101 | 120,000 | 90,000 | 200,000 | 410,000 |
| #102 | 80,000 | 70,000 | 325,000 | 475,000 |
製造間接費の予定配賦は、500円×1,050時間=525,000円で、次の仕訳になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 525,000 | 製造間接費 | 525,000 |
月が終わると、製造間接費の実際の発生額が分かります。 これが530,000円だったとします。予定で割り振った額は525,000円なので、差が出ます。
実際の発生額-予定配賦額=530,000-525,000=5,000円。 実際のほうが多いので、5,000円は割り振りきれなかった分です(配賦不足、借方差異)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 製造間接費配賦差異 | 5,000 | 製造間接費 | 5,000 |
この差異は、決算の時に売上原価に加えて整理します。借方差異なら売上原価を増やし、貸方差異なら減らします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 5,000 | 製造間接費配賦差異 | 5,000 |
向きは、実際が予定より多ければ借方の不利な差異、少なければ貸方の有利な差異、と固定して覚えます。No.16の予定価格の差異と同じ向きです。
○ よくある勘違い:配賦は「実際の作業時間」に予定の率を掛けます。予定の作業時間ではありません
○ 仕損じが出た時の原価の付け方(仕損費)は、問題文に指示が書いてあります 深追いしない
部門別計算は、2段階で考えます。
最初に、各部門で発生した費用を集めます(第1次集計)。 特定の部門で使った費用はその部門に直接つけ、工場全体で使った費用(工場の建物の減価償却費など)は、床面積などの基準で各部門に割り振ります。
次に、補助部門に集まった費用を、製造部門に割り振ります(第2次集計)。試験で問われるのは、ほとんどこの割り振り方です。
次の例で、第1次集計が終わった後の部門費が、次のようになっているとします。
| 部門 | 切削部 | 組立部 | 動力部 | 修繕部 |
|---|---|---|---|---|
| 部門費(円) | 400,000 | 300,000 | 120,000 | 80,000 |
動力部と修繕部は、ほかの部門に次のように用役(サービス)を提供しています。
| 提供先 | 切削部 | 組立部 | 動力部 | 修繕部 |
|---|---|---|---|---|
| 動力部の供給量(kWh) | 540 | 360 | - | 100 |
| 修繕部の供給量(時間) | 40 | 40 | 20 | - |
補助部門どうしのやり取りは無視して、補助部門の費用を製造部門にだけ割り振る方法です。手順がいちばん簡単です。
| 部門 | 切削部 | 組立部 |
|---|---|---|
| 自部門費 | 400,000 | 300,000 |
| 動力部費 | 72,000 | 48,000 |
| 修繕部費 | 40,000 | 40,000 |
| 製造部門費合計 | 512,000 | 388,000 |
合計は900,000円で、最初の部門費の合計と一致します。
補助部門どうしのやり取りも考える方法で、2回に分けます。2級で出るのは、次の簡便法です。
1回目 :補助部門の費用を、ほかの補助部門も含めたすべての部門に、供給量の比で割る - 動力部120,000円(供給量の合計1,000) → 切削部64,800円、組立部43,200円、修繕部12,000円 - 修繕部80,000円(供給量の合計100) → 切削部32,000円、組立部32,000円、動力部16,000円
2回目 :1回目で補助部門に受けた分を、製造部門にだけ割り振る - 動力部が受けた16,000円 → 切削部9,600円、組立部6,400円 - 修繕部が受けた12,000円 → 切削部6,000円、組立部6,000円
| 部門 | 切削部 | 組立部 |
|---|---|---|
| 自部門費 | 400,000 | 300,000 |
| 1回目の配賦 | 64,800+32,000 | 43,200+32,000 |
| 2回目の配賦 | 9,600+6,000 | 6,400+6,000 |
| 製造部門費合計 | 512,400 | 387,600 |
合計はこの方法でも900,000円です。直接配賦法とは、金額が少し変わります。
製造部門費が出れば、後は各指図書の作業時間などに予定の率を掛けて割り振る、という点は第1章と同じです。
○ 試験では「直接配賦法」か「相互配賦法」かが問題文に書いてあります。法の名前を見て手順を選びます
○ 補助部門どうしの順番を決めて配賦する方法(階梯式配賦法)は、出題が少ないので 深追いしない
製造間接費の予定配賦率は「年間予算÷年間の基準操業度」。割り振る額は予定率×実際の作業時間。実際の発生額との差は配賦差異(実際が多ければ借方)。部門別は、補助部門の費用を製造部門に配る。直接配賦法は製造部門にだけ配る。
問1 年間の製造間接費予算は3,600,000円、年間の基準操業度(直接作業時間)は6,000時間です。当月の実際の直接作業時間は480時間でした。製造間接費を予定配賦したときの仕訳はどれですか。
問2 上の問題で、当月の製造間接費の実際の発生額は295,000円でした。配賦差異について正しいのはどれですか。
問3 動力部の費用は90,000円です。動力の供給量は、製造部門Aが300、製造部門Bが200、修繕部が100でした。直接配賦法で、製造部門Aに配賦される動力部費はいくらですか。
問4 動力部の費用は90,000円(供給量は製造部門A 300、B 200、修繕部100)、修繕部の費用は60,000円(供給量は動力部20、製造部門A 40、B 40)です。相互配賦法(簡便法)で、2回目の配賦で製造部門Aに加わる動力部の費用はいくらですか。
出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級の試験科目(工業簿記:個別原価計算・部門別計算)https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 。数値は説明用の架空の例。