日商簿記2級 最短合格講座

区分3 第4問・第5問 工業簿記(40点)★★★

No.19 標準原価計算と差異分析

あらかじめ決めた標準の原価と、実際にかかった原価を比べて、差がなぜ出たかを調べる単元です。第5問の中心で、第4問にも出ます。公式がいくつか出てきますが、型はすべて同じなので、しっかりやります。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 直接材料費と直接労務費の差異
  3. 第2章 製造間接費の差異
  4. 第3章 パーシャルプランとシングルプラン
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 標準原価計算 :目標の原価と比べる計算

製品1個を作るのに、本来ならこれだけかかるはずだ、という目標の原価(標準原価)を先に決めます。 そして、実際にかかった原価と比べて、差が出た理由を探します。差の理由が分かれば、工場の無駄を直す手がかりになります。

No.16・17で見た予定価格・予定配賦は、この仲間です。この単元はその発展形で、差異をもっと細かく分けます。

② 原価標準 :製品1個あたりの標準原価

製品1個あたりの標準原価を、原価標準といいます。次の例(架空)を、この単元を通して使います。

項目 計算 金額
直接材料費 標準消費量5kg×標準価格200円 1,000円
直接労務費 標準作業時間2時間×標準賃率1,000円 2,000円
製造間接費 標準作業時間2時間×標準配賦率700円 1,400円
製品1個の標準原価 4,400円

当月は400個を完成させたとします。標準原価は、4,400円×400個=1,760,000円です。

③ 差異の向き :プラスなら不利、マイナスなら有利

差異は、実際の原価と標準の原価の差です。向きを毎回固定して覚えます。

実際-標準=プラスなら不利(借方差異)、マイナスなら有利(貸方差異)

実際が標準より多くかかれば不利、少なくすめば有利、ということです。

第1章 直接材料費と直接労務費の差異

① 材料費の差異 必ず覚える

当月の実際は、材料2,100kg、実際の価格は195円、実際の材料費は409,500円でした。 標準は400個×5kg=2,000kg、標準価格は200円で、標準の材料費は400,000円です。差は409,500-400,000=9,500円。この9,500円を2つに分けます。

▲10,500+20,000=9,500円で、合計に一致します。(▲はマイナスの意味です)

価格差異は実際の消費量を掛け、数量差異は標準の価格を掛けます。ここを取り違えやすいので、注意してください。

② 労務費の差異 必ず覚える

材料費と型がまったく同じです。価格が賃率、数量が作業時間に変わります。

当月の実際は、作業時間830時間、実際賃率1,020円、実際の賃金846,600円。 標準は400個×2時間=800時間、標準賃率1,000円で、標準の労務費は800,000円です。差は46,600円です。

16,600+30,000=46,600円で、一致します。

○ 材料も労務費も、型は同じです:「単価の差×実際の量」と「量の差×標準の単価」の2つに分ける
○ 数量差異・作業時間差異は、標準の価格・賃率で評価します。実際の価格を掛けないこと

第2章 製造間接費の差異

① 製造間接費の標準配賦率 必ず覚える

製造間接費は、操業度(ここでは直接作業時間)に応じて変わる変動費と、変わらない固定費に分かれます。 これを、次のように予算に組み込みます(公式法変動予算)。

固定費率は400,000÷1,000=400円。標準配賦率は、変動費率300円+固定費率400円=700円です。

当月の実際の発生額は655,000円、実際の作業時間は830時間でした。標準の作業時間は800時間なので、標準配賦額は800時間×700円=560,000円。差は95,000円です。この95,000円を、3つに分けます。

② 3つの差異 必ず覚える

予算差異:実際の発生額と、実際の作業時間における予算額の差

実際の作業時間830時間における予算額は、変動費300円×830時間+固定費400,000円=649,000円です。

予算差異=実際発生額-実際の操業度の予算額 =655,000-649,000=+6,000円 → 不利

能率差異:作業が標準より時間がかかったことによる差

能率差異=(実際操業度-標準操業度)×標準配賦率 =(830-800)×700円=+21,000円 → 不利

操業度差異:基準にしていた作業量まで、仕事がなかったことによる差

固定費は、作業量にかかわらず発生します。実際の作業時間が基準より少ないと、固定費を回収しきれません。

操業度差異=(基準操業度-実際操業度)×固定費率 =(1,000-830)×400円=+68,000円 → 不利

6,000+21,000+68,000=95,000円で、全体の差と一致します。

操業度差異は、ほかの差異と引き算の向きが逆に見えます。 基準より実際が少ないのが不利、と覚えておけば、式の向きは自然に決まります。

○ 能率差異は、材料の数量差異・労務費の作業時間差異と同じ考え方です。「余計に時間がかかった」分
○ 変動費と固定費に分けて能率差異を出す方法もありますが、2級では標準配賦率全体を使う方法が基本です 深追いしない

第3章 パーシャルプランとシングルプラン

① 2つの記帳方法 さらっと

標準原価計算の記帳には2つの方法があります。違いは、仕掛品の勘定の借方に、実際の原価を書くか標準の原価を書くかです。

② パーシャルプランの仕訳 さらっと

仕掛品の借方は、実際の材料409,500円・賃金846,600円・製造間接費655,000円で合計1,911,100円です。完成品は標準で1,760,000円を貸方に移します。

借方 金額 貸方 金額
製品 1,760,000 仕掛品 1,760,000

仕掛品の勘定に残った差額151,100円(=1,911,100-1,760,000)が、原価差異です(9,500+46,600+95,000)。

③ シングルプランの仕訳 さらっと

材料を使った時点で、標準と差異を分けて記録します。

借方 金額 貸方 金額
仕掛品(標準400,000円) 400,000 材料(実際) 409,500
材料数量差異 20,000 材料価格差異 10,500

借方の合計が420,000円、貸方の合計も420,000円で合います。 不利な差異は借方、有利な差異は貸方に書く、という約束どおりです。

製造間接費も同じで、仕掛品560,000円に加えて、予算差異6,000円・能率差異21,000円・操業度差異68,000円がすべて借方に出ます。貸方は実際の発生額655,000円です。

差異は「実際-標準」で、プラスなら不利。材料と労務費は、「単価の差×実際の量」と「量の差×標準の単価」に分ける。製造間接費は予算差異・能率差異・操業度差異の3つに分ける。

確認問題

問1 材料の標準は、標準消費量400kg、標準価格は1kgあたり80円です。実際は420kgを1kgあたり85円で消費しました。材料の数量差異はどれですか。

問2 直接労務費の標準賃率は1時間1,200円、標準作業時間は480時間です。実際は500時間働き、実際賃率は1時間1,180円でした。賃率差異はどれですか。

問3 製造間接費の月間の固定費予算は240,000円、変動費率は1時間100円、基準操業度は800時間です。当月の実際の操業度は760時間、標準操業度は750時間でした。操業度差異はどれですか。

問4 シングルプランで、材料を使った時の仕訳として正しいものはどれですか。標準消費額は32,000円、実際の消費額は35,700円、価格差異は2,100円の不利、数量差異は1,600円の不利です。

出典:日本商工会議所 簿記検定試験 2級の試験科目(工業簿記:標準原価計算)https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 。数値は説明用の架空の例。